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714 懲戒請求による損害は1つ 佐々木北嶋﨑棄却判決② 

東京地裁民事第7部にて言い渡された、佐々木・北・嶋﨑原告の棄却判決より


原告らに生じた損害とその填補について


ア そこで、原告らに対する懲戒請求によって原告らに生じた損害額について検討すると、本件ブログの呼び掛けにより、原告らに対しては1000件弱の大量の懲戒請求がされていることからすると、個別の懲戒請求があった場合と比較して、原告らに対する業務上の信頼や社会的信用の侵害の程度は重大であること、また、原告らが行わなければならない弁護士会綱紀委員会への弁明や事件受任に当たっての利益相反関係の有無の確認といった事務的な負担も、全体としてみれば増大したといえること、全く身に覚えがなく、およそ事実上及び法律上の根拠を欠くことが明らかな懲戒事由に基づき見ず知らずの人々から懲戒請求されたことによって、原告らが覚えた不安も相当深刻であるといえることに加え、本件記録に顕れたその他一切の事情を総合考慮すると、本件懲戒請求を含む多数の原告らに対する懲戒請求によって原告らに生じた精神的損害を慰謝するに足りる金額としては、それぞれ300万円を下らないというべきである。


イ そして、上記⑴で認定した事実によれば、原告らは、選定者ら以外の原告らに対する懲戒請求をした者から、懲戒請求をしたことによる不法行為に基づく損害賠償債権の履行として、既に弁済を受けており、その額は、原告佐々木につき851万6183円、原告北につき631万5730円、原告嶋﨑につき600万8796円であるから(認定事実ク、原告らが、原告第1準備書面において、同種事案であることを認めた訴訟に限ってみても、別紙2の1ないし2の3のとおり、原告佐々木及び原告北は各合計436万3649円、原告嶋﨑は434万8211円の弁済を受けていることとなる。)、本件懲戒請求による不法行為に係る損害は、既に填補されており、原告らは、この額を超えて賠償を求めることはできない。


ウ これに対し、原告らは、原告らに対する懲戒請求をした全ての者を共同の範囲とする共同不法行為が成立するとしても、原告らに対する名誉及び信用の毀損という点においては、各懲戒請求がその原因となる行為であり、同様の行為が多数あるとしても、各行為の違法性が希薄となるものではなく、また、悪意による不法行為に係る精神的損害の賠償については、その性質上、被害者の各加害者に対する損害賠償債権は、他の加害者による弁済が許されない旨主張する。


 しかし、個別の不法行為が成立するとしても、それが同時に共同不法行為を構成する場合において、共同の範囲になる一部の加害者から弁済がされ、その弁済額が当該共同不法行為によって被害者が被った損害総額に達するときは、当該共同不法行為によって被害者が被った損害は全て填補されたという外なく、それを超えて、共同不法行為者中の特定の加害者からの一定額の弁済がなければ慰謝されない精神的苦痛が残存すると考えることはできないから、原告らの損害は、すべて慰謝されているというべきである。


 なお、共同不法行為者である選定者らは、原告らとの関係においては、損害賠償義務を免れることとなるが、弁済をした者との関係では、求償を受け得る立場になるのであって、法的に、本件懲戒請求について何らの損害賠償義務の負担をしないということにはならないし、原告らに対する懲戒請求を共同不法行為ととらえた場合には、懲戒請求によって生じる損害は総体としてより大きいものとして算定されることとなる上、本来、共同不法行為者の中の任意の者から損害額全額の弁済を受けられるという利益を有していたのであるから、共同不法行為の成立を認めることが社会正義に反することにもならない。


 したがって、この点に関する原告らの主張は採用することができない。


4 小括


 以上説示のとおり、選定者らによる懲戒請求については、共同不法行為が成立するとしても、その懲戒請求に係る原告らの損害はいずれも既に填補されたものと認められるから、被告らの抗弁は理由がある。


第4 結論


 以上によれば、原告らの請求は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟用61条を適用して、主文のとおり判決する













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