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0326  最高裁よおまえもか⑭

第二小法廷から棄却判決が来ないので、関連で一題。

冤罪、冤罪とわめいているが、やっていることは懲戒請求裁判とまったく同じである。






コメント1 手術後の女性にわいせつの疑い 警視庁、医師を逮捕


2016/8/25付日本経済新聞 夕刊

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手術後で麻酔が残る女性患者にわいせつな行為をしたとして、警視庁千住署は25日、柳原病院(東京都足立区)の非常勤外科医、関根進容疑者(40)=文京区本駒込2=を準強制わいせつ容疑で逮捕した。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO06480460V20C16A8CC0000/


2016年12月05日 11時41分 JST | 更新 2016年12月05日 12時25分 JST

「手術直後にわいせつ行為」起訴後も不当勾留中の外科医師の保釈を要求する

両者の心の痛みを最小限に留めることができるのは、良心を持ち合わせるべき東京地方裁判所に他なりません。

佐藤一樹医療法人社団いつき会ハートクリニック理事長・院長


第1章 協力依頼の趣旨

2016年8月25日に準強制わいせつ罪の疑いで逮捕された柳原病院(東京都足立区)勤務の乳腺外科医師は、公訴提起(起訴)された後も身柄を拘束され、起訴後2か月以上、逮捕から3か月近く経過した現在も東京拘置所の独房に勾留されています。これまで弁護団は、4回にわたり保釈請求を行ってきました。しかし、勾留担当の刑事第14部(大野勝則部長)をはじめとして東京地方裁判所刑事部は、「具体的にその理由を附す」ことなく「罪証隠滅の虞(おそれ)」 を要件に勾留を継続し、保釈を認めません。本件の資料や諸事情を充分に検討し勘案したところ、刑事訴訟法第60条第2項に定められた、起訴(公訴提起)後2箇月を経過した現時点において、これ以上の勾留期間更新の必要性はなく、保釈の相当性と必要性も明らかです。このままでは、個人の基本的人権を侵すことになる上、喫緊の現実問題として、ご家族が経済的困窮に追い込まれている状態です。今後、仮に保釈が認められた場合も、その金額は2000万円程度とも予測され、8人からなる弁護団の費用や裁判準備費用など、諸経費も1000万円は優に超える額になると推測されます。そこで、本稿読者には、裁判所に向けた「直ちに外科医師の保釈許可を求める署名活動」の支援、および設立した「外科医師を守る会」基金(ゆうちょ銀行 店名 〇五八(ゼロゴハチ) 店番058 普通預金 7045221)へのご協力をお願いします。「外科医師を守る会」の作成した(I)支援基金ご協力の呼びかけ文書(II)署名用紙(III)会則を添付いたします。1.準強制わいせつ被告事件(平成28年(刑わ)2019号)の概要2016年5月10日、乳腺外科専門医が右乳腺腫瘍摘出手術直後の患者診察の際に、健側の右乳首を舐め、一旦退室し、その後更に同人の右乳房を見ながら、陰茎付近をさすり自慰行為をするなど抗拒不能に乗じてわいせつな行為をしたという被疑事実をもって、千住警察署は、手術から任意取り調べを一回もすることなく、100日以上経過した8月25日に、突如として逮捕・勾留しました。東京地方裁判所は勾留を決定し、東京地方検察庁は、9月14日に起訴しました。起訴状の公訴事実では、「乳房を露出させた上、その左乳首を舐めるなどし、もって同人の抗拒不能に乗じてわいせつな行為をした」とあり、逮捕時の勾留状の被疑事実の「自慰行為」は削除されています。2.背景となる事実経過2016年5月10日 手術7月7日 柳原病院が申入書(詳細な事実経過)を千住警察署に提出8月25日 逮捕 (逮捕以前の任意取調なし)8月27日 勾留決定 勾留決定準抗告⇒棄却 勾留取消請求⇒却下8月28日 捜索差押(柳原病院) 被疑者自宅および所属医療機関捜索差押9月4日 捜索差押(柳原病院・二回目)9月5日 勾留理由開示公判 被疑者(外科医師)が被疑事実を否定9月8日 第1回公判期日前証人尋問 A証人(医師) 2時間9月9日 第2回公判期日前証人尋問 B証人(看護師) 2時間9月14日 公訴提起(起訴決定)9月16日 保釈請求 (刑事第14部)9月21日 保釈請求 却下9月23日 準抗告 却下10月11日 保釈請求(二回目、刑事第14部)10月13日 東京保険医協会 保釈嘆願書送付10月14日 保釈請求 却下→準抗告 却下11月14日 起訴(公訴提起)後2箇月 3、4回目の保釈請求も却下され11月20日に初公判が予定。



第2章 協力依頼の理由

はじめに私は、2002年の東京女子医大心臓外科手術事件で逮捕・勾留・起訴され、勾留90日にして保釈金2000万円を払わされ、冤罪を晴らすために7年以上を費やした経験があります(ちなみに、保釈金は3年後の一審無罪判決でその額のまま返還され、3年間の利子などありません)。この経験や、福島大野病院事件が医療崩壊を誘発したことなどから、異常に増加した医療刑事事件を抑制する活動をしてきました 。当該柳原病院では逮捕直後から5人の医師を呼びかけ人として「外科医師を守る会」が立ち上がり、保釈を求めてきました。これに対し、今回の外科医師の身柄拘束は、麻酔薬等を用いる各医師個人の基本的人権にかかわる問題であることから、私個人だけでなく東京保険医協会において何回も開催された勤務医委員会や理事会、複数の医師弁護士のダブルライセンサーや医療に詳しい法律家や法律に詳しい医師らからなる複数の団体メンバーらと検討してきました。また、被害を訴える患者さんを尊重しつつ、主任弁護人や柳原病院の事務局と複数回お会いし、客観的な事実や可能な限り正確な証拠収集を慎重におこない充分な討論を行ってまいりました。さらに、外科医師が勾留されている東京拘置所に通い、被告人となった当事者本人との接見を数回にわたり繰り返し、ご家族らから何回も事情を聞いてまいりました。無罪か有罪かの判断はもっぱら裁判所にゆだねられるものです。また、麻酔薬の薬理効果およびベッドサイドの診療現場の状況を日常臨床の場で知る私にとって、本件の勾留状の被疑事実も、これとは犯行態様が変遷した起訴状の公訴事実も真実でないと確信的に考えておりますが、この公訴事実が合理的な疑いを差し挟む余地のない事実であるかどうかについては、裁判所が厳正な手続きと慎重な審理によって必ずや正しい判断をされると信じています。一方で、勾留更新・延長の必要も理由もなく、保釈の相当性と必要性が存在するについては絶対的に明らかであると私は判断しています。これまでの東京地方裁判所の保釈請求却下決定では、「罪証隠滅の虞(おそれ)がある」とされてきました。しかし、諸事情を勘案すれば、外科医師が実効性のある罪証隠滅行為に及ぶという、具体的な可能性を示唆する根拠は存在しません。むしろ、公訴提起され2箇月が経過した現在においては、とうに捜査官において証拠が収集されておりますし、また起訴前の証人尋問によっても裁判所における証言が得られていることからして、「具体的な」証拠隠滅の可能性は想定できません。他方、このような状況の中で医師が逮捕勾留され、しかも、起訴後においても勾留が継続するのでは、外科医師の基本的人権が侵害され、また医療行為をなし得ないという医師としての極めて重大な不利益が認められるのみならず、類似の医療行為、類似の薬品を扱う保険医に極めて深刻な萎縮作用が生じかねません。したがって、このまま身柄を拘束し続けることについては断固として反対し、10月14日には、私個人だけでなく東京保険医協会の総意として外科医師を直ちに保釈することを東京地方裁判所長、刑事部長、刑事第14部部長(勾留担当)、刑事第3部部長(公判担当)に嘆願書を提出し、司法記者クラブで記者会見をしました。以下協力依頼の理由の詳細を述べます。第1 罪証を隠滅するおそれがないこと1.起訴状の公訴事実と勾留状の被疑事実では犯行時刻・時間・態様が変遷していることから必要な捜査が終了していると判断されること勾留状の被疑事実と起訴状の公訴事実は以下のように整理できます。(1)犯行時刻・時間:被疑事実 (I)午後2時45分から50分まで(II)午後3時7分から12分頃まで.公訴事実 午後2時55分から3時12分頃まで.(2)犯行態様:被疑事実 (I)乳首を舐めた.(II)陰茎付近をさすり自慰行為をした.公訴事実 乳首を舐めるなどした.これらを検討すれば、21日間の逮捕・勾留期間中には、検察官による捜査と要求によって、外科医師本人や被害を訴える患者さんからの供述、当該柳原病院の医師や看護師ら病院関係者の異例ともいえる期日前証人尋問を経て、自慰行為の存在は麻酔後の譫妄による誤解だと判断されて落とされたものと推測されます。患者さんの供述の変遷をもとに検察官がこの判断がされたのであれば、その供述者の信用性が減殺されるのが当然であることはさておき、被疑事実を翻すほどの充分な取調は終了しているといえます。2.証拠調べには相当な時間の経過からも必要な捜査が終了していること警察官は犯行があったとされる本年5月10日当日から捜査を開始し、8月25日逮捕までの107日間で、国家権力をもつ警察組織として医師逮捕勾留に踏み切るために充分で捜査を行ったはずです。また、警察、検察ともに、起訴までの21日間にわたり集中的に捜査を追加し、結果として検察官は、公訴を提起(起訴)しました。したがって、仮に物的証拠収集が存在したとしても診療録など病院側が保持する客観的な証拠や外科医師の自宅や常勤病院における捜査などはすでに捜査機関による調べが終了しているはずであり、改竄などによる物的証拠隠滅は不可能です。すなわち、今後も罪証隠滅が可能な新しい物的証拠が出現する可能性はないはずです。かろうじて罪証隠滅として推定されることは、被害を訴える患者さん自身や病院関係者への働きかけによることのみであり、前記の収集された証拠からすれば、今後、外科医師が患者さんや病院関係者に働きかけることは具体的には想定されず、将来的にも想定できる「具体的な」証拠隠滅の可能性はありません。しかし、公判開廷後も法廷での患者さんへの被害状況の尋問が予想されるうえ、当事者の供述については起訴までに警察、検察ともに調書の作成を終了しているはずです。また、病院側関係者についても同様で、検察官は証人尋問を要求してそれに応じた法廷において供述や事情聴取は終了しているはずです。3.証拠隠滅の意志はなく阻止が可能であること以上で述べてきたように、外科医師が実効性のある罪証隠滅行為に及ぶという、具体的な可能性を示唆する根拠は存在しません。万が一、患者さん自身などに働きかけて被告人に有利な供述をするという疑いを持っているのであれば、すでに外科医師が弁護人を通して誓約したように、裁判所が、患者さんに接触を禁ずる旨の保釈条件を提示すればよいはずです。しかも、外科医師は保釈等に伴い、弁護人等から禁止事項の遵守に関する説明等をうけますから、患者さんや病院関係者に働きかけることが保釈取消しになること、ひいては無実を訴える外科医師の供述の信用性を損なうこと等について十分に承知するはずです。自ら、無罪の可能性から遠ざかる行動をするはずがありません。また、柳原病院関係者については、すでに同院のウエッブサイトのホームページで患者さんの訴えていることに対して齟齬があることを明らかにしているので、外科医師の働きかけによる口裏合わせなどによる罪証隠滅をする必要性はすでになく具体的な実効性もありません。それでも疑うのであれば、患者さんと同様に病院関係者とも接触を禁ずる誓約をさせればよいはずです。第2 基本的人権を侵す上、医療崩壊を誘発する社会的問題でもあること1.基本的人権を侵すことそもそも勾留状では、住所不定や逃亡を勾留理由としていませんので、勾留当初から罪証隠滅の疑い以外には勾留の要件はありません。したがって、上にみたように現時点において罪証隠滅の「具体的な」可能性を示唆する根拠がないので、勾留理由が存在しないことになります。東京地方裁判所が、充分な証拠をもって実効性がある「具体的な」罪証隠滅の可能性を示すか、別の勾留要件を示さないのであれば、国民の裁判所に対する信頼感にも疑問が生じることになります。勾留や保釈を定める刑事訴訟法には、「左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。」(同法60条1項柱書き)、「勾留の理由又は必要がなくなったときは、裁判所は、(略)職権で、決定を以て勾留を取り消さなければならない。」(同法87条1項)、「保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。」(同法89条柱書き)、「裁判所は、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。」(同法90条)等と定められており、起訴後における身体拘束は極めて例外的な場合にのみ許されることは法律上明らかなのではないでしょうか。さらには、「勾留の期間は、公訴の提起があった日から2箇月とする。特に継続の必要がある場合においては、具体的にその理由を附した決定で、1箇月ごとにこれを更新することができる。」(同法60条2項)との記載からすれば、現時点における保釈は当然なのではないかと考えます。私は、法律の専門家ではありませんが、すべての国民の人権に関わる法律においては、文言どおりに法解釈、法適用をされることこそ、司法に対する信頼感が生まれるのではないでしょうか。なによりも、推定無罪の原則からして、被告人が公訴事実を否認しているとしても、恣意的かつ漠然的で具体性のない勾留理由により、一個人に対する不必要な身柄拘束をすることは身体的・心理的・経済的不利益を生じさせることになります。人道的にも容認できることではなく、基本的人権を侵すことになります。2.医療崩壊を誘発する社会問題であること逮捕勾留前の外科医師は、常勤のクリニックの他にも、都立病院、別のクリニック、柳原病院で精力的に日々多くの患者の疾病を診療し、生命を救い、社会に貢献し続けてきました。勾留され、医療活動ができないこと自体が、本人だけでなく社会にとっての大きな損失です。さらに、おそらくは麻酔による譫妄状態(錯視状態)であった患者さんの逮捕勾留前後で大きく異なっている証言のみを根拠として医師の犯罪を疑い、逮捕され、起訴後も勾留され続けていることが許されるのならば、医療現場に混乱と萎縮を招き、正当な医療行為や診療行為に大きく制約され、いわゆる医療崩壊を誘発し、ひいては国民に重大な不利益が生ずるといった、社会的にも大きな影響が及びかねません。福島大野病院事件における逮捕勾留が産婦人科領域の萎縮につながったことはご周知のとおりです。第3 外科医が経済的に困窮していること1.国家権力との闘争資金の必要性村木厚子元厚生労働事務次官の逮捕起訴事件のように、刑事裁判の被告人が、無実や冤罪を主張しても、検察官は一回方向性を決定すると、証拠を改竄してでも起訴して有罪を作ろうとします。国家機関の中でも最も強権的である検察を相手に闘うためには、憲法に唯一書かれた民間の職業である弁護士が必ず付くことになっています。この弁護費用については、案件によって違いますが、8人の弁護団に対する費用は相当な額になると推測されます。たとえば、私の知人医師2人が医療刑事事件の被疑者として嫌疑をかけられた時、被疑者の段階(起訴前)の弁護費用はそれぞれ500万円と600万円と聞きました。案件や法律事務所によって相違はあり、その実態は不明で、金額に一定のものではありませんが、それなりの相場があるのかもしれません。私の場合、起訴され一審無罪で、控訴審まで闘い足掛け7年刑事事件を闘いましたが、弁護団は二人であっても長く裁判していれば、支払いの回数も増えてきます。現在、外科医師の弁護団は8人ですか、起訴されたからにはそれなりの金額が必要になりるはずです。2.保釈金について一般に、保釈金の金額の基準は、大きくわけて2つあります。1つは、事件が重大であるかどうかや、見込まれる刑の重さなど、保釈を認めるリスクの高さが影響しています。2つ目の基準は、被告人の経済力です。これは医師の場合一般には高収入をされており、具体的な資産や給与などきめ細かい計算がなされる訳ではありません。私の場合は、業務上過失致死傷罪の疑いでしたが、保釈時は無職で収入0。妻のアルバイト料では大きな赤字になるローンが15年以上残っている中古マンションと、60回払いのローンが数年残っている中古自動車程度の資産でしたが、一回目の保釈決定では1500万円。しかもこれは準抗告で取り消され、結局一か月以上後に保釈決定が遅れた上、保釈金は2000万円に跳ね上がりました。外科医師が勤務できないことやご家庭の子育て事情から配偶者が職につくこともできず、経済的困窮は切迫している状況です。おわりに他の患者さんとはカーテン1枚で隔てられているだけの一般病棟の4人部屋において、公訴事実のように医療者が、 消毒液が塗布されたうえ、手術時の血液が付着している可能性の高い局所を舐めた、ということは実臨床の世界では全く想像できません。しかも、その時には、患者さんの母親がカーテンの傍らにいて、薬剤師が向かい側のベッドの別の患者さんに薬剤説明を行っていたという病院側の調査結果事実を考慮すれば、公訴事実は疑わしくなります。また、当該患者さんご自身がその行為事実を明確に記憶できる状態であったのに対し、隣の患者さんやその薬剤師、出入りする看護師に気が付かれない程度の拒否行動や、聞き取ることができないような発言すらできない状況を誘発する薬理効果がある薬剤は存在しません。よって、本件公訴事実については極めて疑わしいと推測されます。本件は、おそらく、麻酔影響下の譫妄(錯視)による性被害体験患者と、その体験供述による嫌疑を受けた医師と、いずれも気の毒な立場にある事件です。両者のこの心の痛みを最小限に留めることができるのは、良心を持ち合わせるべき東京地方裁判所に他なりません。しかし、そのこと自体以前に、上記、第1および第2で述べてきたように、現時点以後の勾留継続は、正当な理由がなく、基本的人権を侵すものであり、医療崩壊にもつながることからも、外科医師個人だけでなく、保険医を含む医師・医療従事者はもちろんのこと、医療を受けるわが国の国民の司法に対する不信と医療萎縮による不利益をいたずらに助長することになります。裁判所が、冷静で公正な視線によって、直ちに外科医師の保釈許可を決定するよう、強く協力をお願いいたします。また、外科医師にとって、今後裁判を闘うためには数千万円が必要であることも考慮いただき、基金へのご協力も併せてお願いしたく存じます。 以上


http://expres.umin.jp/mric/mric_267-1.pdfhttp://expres.umin.jp/mric/mric_267-2.pdfhttp://expres.umin.jp/mric/mric_267-3.pdf-----------------------------------------------------------------------------i 刑事訴訟法 第60条 2項 勾留の期間は、公訴の提起があった日から2箇月とする。特に継続の必要がある場合においては、具体的にその理由を附した決定で、1箇月ごとにこれを更新することができる。但し、第89条第1号、第3号、第4号(罪証隠滅)又は第6号にあたる場合を除いては、更新は、1回に限るものとする。ii 刑事訴訟法 第60条 1項「裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。1.被告人が定まった住居を有しないとき。2.被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。3.被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるときiii 外科医師の早期釈放を求めます」― 外科医師不当起訴事件 ― http://yanagihara.kenwa.or.jp/syomei.pdfiv MRIC Vol.306 「医師法21条」再論考―無用な警察届出回避のために― http://medg.jp/mt/?p=1509MRIC Vol.317 「異状死」の定義はいらない~無用な警察届出回避のために その2http://medg.jp/mt/?p=1520医療事故等の警察届出、2015年は前年から半減 警察庁調べで65件、1999年以来、16年ぶりの2ケタm3.com 医療維新 シリーズ: 始動する"医療事故調"レポート 2016年4月6日 (水)配信橋本佳子(m3.com編集長)https://www.m3.com/news/iryoishin/414371v 「『手術直後にわいせつ行為』起訴の外科医の早期釈放求め、東京保険医協会が嘆願書」弁護士ドットコムニュース 2016年10月14日 15時15分 https://www.bengo4.com/iryou/n_5229/vi 「『医療崩壊を誘発、不当な勾留』、準強制わいせつ罪・起訴医師 東京保険医協会、早期釈放を求め東京地裁に嘆願書 」m3.com 医療維新 レポート 2016年10月14日 (金)配信橋本佳子 https://www.m3.com/news/iryoishin/467658vii 「術後の猥褻行為容疑―「不当逮捕」の署名2万筆」樫田秀樹 週刊金曜日 公式ブログ 週刊金曜日ニュース 2016年11月16日10:12AM http://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/?p=6343(2016年12月2日「MRIC by 医療ガバナンス」より転載)

https://www.huffingtonpost.jp/kazuki-sato/doctor_demand_b_13423380.html



コメント2  外科医師を守る会


無罪を確定させるためにご支援を…ブログを更新しました(2020.7.13更新)

病院の声明

【声明】

柳原病院の声明

声明1 : 2016年8月25日 15時45分 医療法人財団健和会 柳原病院


警視庁による当院非常勤医師逮捕の不当性について抗議する

1、当院非常勤医師逮捕について

2016年8月25日、警視庁により当院非常勤医師が逮捕されたとの報道がされ、その後当院はその事実を確認した。この逮捕は全身麻酔手術後患者の訴えのみを根拠とする警視庁による不当な逮捕である。


2、経過

2016年5月10日、16時頃、当院1泊入院予定で右乳腺腫瘍摘出手術を実施したA氏が、手術終了直後に4人部屋の病床にて、術後診察に訪れたB非常勤医師からわいせつな行為をされたとして、友人を通じて警察通報した。なお、A氏はB医師が勤務するCクリニックのB医師が担当する外来患者で、手術のために当院に入院した。同日、通報により千住警察署員が来院し、当院は患者本人や他の入院患者の症状に配慮しながら、求めに応じてA氏との面談のために場所を提供し、当該病床にも案内をした。


当院は直ちにA氏に関係した職員より手術前から通報に至る間の状況について聞き取りや病室とベッドの位置、ベッド高さ等現場検証を行った。また、6月9日には、A氏申請に基づいて全診療記録を警察署へ持参した。7月7日には、当院内部調査による時系列事象や現場検証実施の記録及びそれらの検討からわいせつな行為はなく、捜査を速やかに終了するよう求める申入書を当院顧問弁護士名で提出した。その際警察は、A氏身体からの採取物から物証があったと明言することはなく、当院にこれ以上の捜査協力を要請する根拠も理由も示せなかった。7月7日以降千住警察からは一切の問合せもないまま、8月25日突然の逮捕となった。


3、当院の見解

当院は詳しく院内調査を実施し、顧問弁護士と相談しながら院内調査の概要を示すとともに、警察の要請に対して対応してきた。また、A氏自身は5月11日、27日の術後診察を当院外来で受診し、半年後の経過観察の診療予約も行っている。


当院の調査でA氏の術後の供述は、全身麻酔による手術後35分以内のことであり、その内容は、手術前の恐怖や不安と全身麻酔で行った手術後せん妄状態での幻覚や錯覚が織り交ざったものと確信する。さらにA氏は満床在室の4人部屋におり、術後の経過観察に看護師が頻回に訪床する病床にいた。多くの目がある環境の中でA氏の供述の様な事が誰にも知られず行われたとは考えられない。この様に当院として医学的、客観的に状況や経緯を検討し、その調査結果を警察に提示したにもかかわらず、警察は「A氏の証言に信憑性がある」と判断して非常勤医師の逮捕にまで踏み込んだのである。この様なことが許されれば、今後、施術医師が術後診察に病室を訪れることを躊躇う要因ともなり、正当な医療行為に制約を付すことになりかねない。


当院は、今回の不当逮捕に強く抗議する。警察は、手術後せん妄状態時の患者証言に信憑性があるとして明確な証拠も示さず、準強制わいせつによる逮捕にまで踏み込んだものである。しかし、逮捕の要件であるところの、逃亡のおそれ、証拠隠しのおそれなどの事由は、B医師にはない。多数の患者の健康をあずかる医師を逮捕し勾留することは、自白強要を目的とするものと言わざるを得ない。この警察のやり方は不当であり、この間の冤罪事件での捜査手法や人権蹂躙に対してなんら反省もない態度だと考える。さらに警察のこうした横暴が、医療現場に混乱を与え、患者、利用者、職員やその家族に不安を招いた事を、当院は厳しく糾弾するとともに、警察当局に謝罪を求め、この様な強引で不当な捜査を直ちに止め、B医師を速やかに釈放するよう求めるものである。    以上


声明2 : 2016年9月17日 17時00分 医療法人財団健和会 柳原病院


当院非常勤医師の起訴について

1、当院非常勤医師の起訴について

2016年9月14日、東京地方検察庁は、8月25日に逮捕された当院非常勤医師に対し、起訴を決定しました。当院は、この起訴決定に抗議するとともに、医師を速やかに釈放するよう求めます。


2、経過

当院は、2016年8月25日付で「警視庁による当院非常勤医師逮捕の不当性について抗議する」との声明を発表し、医師逮捕への見解を明らかにしてきました。これに対し、当院には多くの医療関係者や患者の方々から、当院の見解を支持する声や、医師の名誉回復を願う声などの激励が寄せられました。


この間警察は、二度にわたり当院への家宅捜索を行い、およそ事件に無関係な個人情報を含む二十数点もの資料を押収しましたが、嫌疑を裏付けるものは何一つありません。また患者に関わった当院医師と看護師が、期日前証人尋問に応じましたが、逮捕された医師に何ら嫌疑がないことを証言する以外にありませんでした。医師も警察の取り調べに対して否認を貫きました。また、短期間に七百余名の方から早期釈放・不起訴を求める嘆願書が集まり、地検に提出されました。しかし、逮捕から21日間の勾留期間を経て、9月14日の起訴に至りました。起訴状の公訴理由は、これまでの逮捕勾留の根拠とされた被疑事実から時刻や行為の内容が大幅に変えられ、起訴ありきの考えをうかがわせるものでした。


3、当院の見解

現時点でも警察からは物的証拠は何も示されず、家宅捜査や証人尋問においてさえ、容疑を裏付けるものは何一つありません。改めて本件は、無実の事案であり、逮捕勾留は自白の強要を目的としたもので、起訴は客観的証拠に基づかない不当なものであると私たちは考えます。

 麻酔によるせん妄状態の患者証言のみを根拠とした医師の逮捕・起訴が許される事になれば、医療現場に混乱と萎縮を招き、正当な医療行為や診療行為に大きな制約が付され、ひいては患者に重大な不利益が生ずることになりかねません。

 この様な社会的にも大きな影響を及ぼす起訴決定に強く抗議し、医師の速やかな釈放を求めます。


4、皆さまへ

医師逮捕の報に触れ、皆さまにご心配とご迷惑をおかけしていることに深くお詫びを申し上げます。私たちはより一層、患者さんの療養環境や医療安全の充実に鋭意努力するとともに、医師の名誉と信頼回復のために早期釈放と無罪判決に向けた取り組みをすすめてまいります。

 またこれまで、全国から当院並びに医師への激励や支援をお申し出いただきました医療関係者、弁護士、患者をはじめ多くの皆さまに感謝申し上げ、引き続きご支援ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。       以上

https://gekaimamoru.org/statement/



コメント3 外科医は本当に「わいせつ行為」をしたのか


社 会

外科医は本当に「わいせつ行為」をしたのか

「冤罪」か「有罪」か、注目される裁判の行方

 医師が患者へのわいせつ事件で逮捕。職業人としての前に、人間として決してあってはいけないことである。だからこそ、やった人間は厳しく罰せられなければならない。だが、もしもそれが冤罪だとしたら。「わいせつ犯」として実名をさらされた医師の名誉はどう回復されるのか。


 そんな冤罪が疑われる事件が7月、東京都内で起きた。インターネット上では、この事件をめぐり冤罪を唱える医師らが活発に発言している一方で、逮捕された医師は「変態医師」として多くの人の好奇の目にさらされ、人格が攻撃される事態にもなっている。刑事裁判で「有罪」が確定するまでは無罪というのが日本の司法制度の建前ではあるのだが、一度傷つけられた信頼を回復するのは並大抵のことではない。

 「本当に、怖くてやっていられないですよ」

 そう憤るのは関西地方の大学病院勤務の外科医だ。最近は仲間内でもよく事件が話題に上るという。

 「全身麻酔後の幻覚や妄想は、外科医なら誰でも知っていること。その妄想がたまたま、医師が自分に何かをしたという内容だったら逮捕されるということじゃないですか」

 外科医の言はもっともなのだが、その前にまずは、事件を振り返ろう。


 現場となったのは、東京都足立区で整形外科や婦人科などの診療を行う「柳原病院」。住民たちがお金を出し合って約60年前に診療所として設置され、地元で長く愛される病院だ。全日本民主医療機関連合会(民医連)に加盟し、差額ベッド代を徴収しないなど、低所得者や救急患者の受け入れも積極的に行っている。


 5月10日の夕刻に、"事件"は起きた。警視庁担当記者によると、同院に非常勤で勤める関根進氏(40歳)が、右乳腺腫瘍の摘出手術を受けた30代の女性患者に対し、2度にわたって着衣をめくり、左胸の乳首をなめるなどのわいせつな行為を行ったというのだ。2度目には自慰行為に及び、それを患者に見せたという。

 患者は全身麻酔から覚めたばかりで、意識はあるものの身動きは取れない状態。そのため、被害を受けてから数十分たった後に会社の上司に連絡、上司が110番通報して発覚した。関根医師は事件から3カ月以上経過した8月25日、警視庁千住署に準強制わいせつ容疑で逮捕され、9月14日に東京地検に起訴された。

 ところが、この逮捕に猛抗議をしたのが当の柳原病院だった。逮捕当日、病院のホームページに「警視庁による当院非常勤医師逮捕の不当性に抗議する」と題する抗議文を掲載。関根医師は冤罪だと訴えたのだ。


「術後せん妄状態の患者の妄想」と病院

 病院側の言い分はこうだ。女性患者の被害の訴えは「手術前の恐怖や不安と、全身麻酔で行った手術後せん妄状態での幻覚や錯覚が織り交ざったもの」であると。つまり、女性は麻酔後のせん妄状態によって、実際には起きていない妄想の中の犯行を、本当に行われたように錯覚してしまった、というのだ。


 にわかには信じがたい病院側の主張だが、全身麻酔後のせん妄状態というのは、医師の間ではよく知られていることらしい。妄想の内容はさまざまだが、こうした性的なものも珍しくないという。複数の医師や医療関係者が同様の主張をツイッターやブログなどで行ったことから、術後の自分の患者にわいせつ行為を働くとはとんでもないと、関根医師の個人情報がさらされ、その犯行内容について非難する書き込みがあふれていたネットでもそのうち、犯行を疑問視する声が散見されるようになった。中には、術後せん妄についての医学論文を日本語に翻訳して紹介する猛者も登場。医師が同業者の犯罪をかばってせん妄状態と主張しているのではないかと反発する声もあるが、こうした科学的エビデンスの提示により、徐々にその内容を信じる人が増加してきた。


 もっとも、病院側が無罪を訴える理由は他にもある。そもそも女性が術後に運ばれた部屋は4人部屋で、当時は満室。他の入院患者や見舞客、頻繁に巡回する看護師らに知られずに犯行が行えたのか疑問だとした。さらに、ベッドの位置や高さから独自に犯行態様を検討し、警察が主張する犯行は不可能であると主張した。


 担当記者によると、関根医師は逮捕当初から、「やっていない」と容疑を否認。病院側は「証拠隠滅の恐れもないのに身柄を拘束し、長時間にわたり取り調べを行って自白を強要した」と警察当局への反発を強めている。さらに、9月5日に東京地裁で開かれた勾留理由開示公判では、関根医師の弁護側は具体的な証拠をいくつも示して、無罪を主張した。


 司法担当記者が解説する。

 「弁護側はまず、犯行時間帯の矛盾を突いた。犯行時間帯に関根医師が患者の病室にいなかったり、いても看護師や他のスタッフと一緒だったと主張。さらに、患者が目を閉じた状態のまま、小声で『ぶっ殺してやるからな』などと言っていたことを看護師が聞いており、患者が妄想状態だったことを暗に指摘した」

 他にも、2度目の犯行があったとされるときは、患者の母親が病室におり、関根医師が診察する間はカーテンの外に出ていたが、20秒ほどで診察を終えたと主張。ベッドの高さなどから言っても、犯行は不可能だとした。弁護側は「妄想の中でひとたび患者が被害を申告すれば医師が逮捕されるという実例が許容されれば、男性医師の萎縮を招き、診療差し控えなどで患者に影響が及ぶ」と懸念を示した。


共産党系の民医連だから警察の標的?

 麻酔科医や外科医にはこの弁護人の主張に首肯する人は多い。冒頭の外科医の言葉の通り、実際に患者の主張だけで逮捕されるとしたら、医療現場の混乱は避けられない。都内の外科医は「非常勤医師のためにここまでしてくれる病院はなかなかない」と柳原病院の姿勢を評価するが、一方で同院が民医連系、つまり警察が目の敵にする共産党とつながりが深いことが警察の〝標的〟になったのではないかとの指摘もある。


 当の警察当局は、こうした弁護側の主張には懐疑的だという。警視庁担当記者は「警視庁は関根医師が常習犯だとみている。過去にも表面化しなかった同様の事件があるようだ」と明かす。手術をしていない患者の左胸から関根医師のDNAが検出された、はたまた病室の防犯ビデオに犯行が映っていた、など、事件を示す物証が見つかっているとの情報もある。「いずれにしても警察は強気で、検察も準強制わいせつ罪で起訴した。公判を維持できる、つまり有罪にできると踏んでいるからだ」とこの記者は話す。


 となれば、今後開かれるであろう公判では、検察側と弁護側の全面対決が見込まれる。ただでさえ準強制わいせつという罪名からネットでは〝変態医師〟と中傷されている関根医師。裁判の行方が注目されるが、仮に無罪となった場合でも、失ったものはあまりに大きい。

https://www.medical-confidential.com/2016/10/07/post-2799/




乳腺外科医によるわいせつ事件で逆転有罪判決 医療従事者に知ってほしい被告人側の不思議な供述

小川たまか | ライター

7/13(月) 16:54


 一審の東京地裁で無罪判決が出た乳腺外科医による準強制わいせつ事件について、7月13日の東京高裁で逆転の有罪判決が言い渡されました。


乳腺外科医の準強制わいせつ事件、逆転有罪「懲役2年」 東京高裁(弁護士ドットコム/2020年7月13日)

 判決は原審を破棄、懲役2年。量刑の理由について裁判長は「麻酔から覚めきっていない患者に対して、診察と誤解させる態様で犯行が行われた」ことや、「被告人は一貫して犯行を否認し、反省を示していない」ことと述べました。


 一審では、被害者が麻酔後に性的幻覚を見た(いわゆるせん妄状態だった)可能性があるとされ、鑑定で被害者の左胸から被告人のDNAが検出された結果について、医師が被害者の胸を舐めたことが最有力の仮説と言えるかもしれないが、それでも手術時の会話や触診の際に唾液の飛沫が飛んだことによる可能性を否定できないとされました。

 控訴審では、検察・弁護側双方から、せん妄に関する専門家が証言者として出廷。検察側証人は「Aさんの証言は信用でき、幻覚があったとは言えない」「(医療者によるわいせつ事件は稀かのように言われているが)稀ではない」などと証言したのに対し、弁護側証人は「せん妄の典型例」と証言。

 判決では、検察側証人の証言が、弁護側証人より信頼できると判断されました。


医療従事者に考えてほしい、被告人側の供述

 この事件について、控訴審の1回目から判決まで全て傍聴してきました。一審の裁判時から、被害者にとっては大変酷な時間だったと思います。毎回、傍聴の抽選に並ぶ人の多くは被告人側(医師側)の支援者。

 裁判所前では「冤罪を許してはいけない」というスピーチが繰り返されていました。


 今日も、裁判所前では、被告人側の支援者が「満床で、カーテンで一枚仕切られているだけ、看護師が入れ替わり立ち替わり訪れる場所で、わいせつ行為が行われることは現実的ではない」といった内容を訴えていました。

 被告人側の支持者には医療関係者も多かったと思われます。私は、この事件を機に、医療関係者が考えた方が良いことは、「これでは男性医師は女性患者を診察できなくなる」といった内容ではないと思っています。


 実は一審でも「被告人の供述の信用性は慎重に判断する必要がある」とされた部分がありました。

 なぜ被害者の胸にDNAが付着したかについて、被告人側の主張は次のようなものでした。

手術の当日、起床時の身支度以降は手術の直前まで手を洗わなかった

ニキビを潰したり、ひげを触ったりする癖がある

 手術当日の午前中には多数の患者を診察し、触診もあったのに、手術の直前まで手を洗わなかったというのは、ちょっと信じられません。一審判決でも当然「医療従事者の行動としてにわかに信じ難い内容」と断じられています。


 高裁判決では、手術中に唾液が飛散した可能性について、手術中に左胸の側にいたのは別の医師であり、この医師のDNAは検出されていないことも指摘されました。


なぜ顔入りの患部写真を撮る必要があったのか

 また、通常であれば患部のみを撮影する手術前写真について、被害者女性の場合は顔も入れた写真を複数枚撮影されていたことや、撮影記録を捜査前に消した痕跡があったこと。これを被告人を支援する医療従事者は、どのように捉えているのでしょうか。


【参考】乳腺外科医が準強制わいせつに問われた公判、無罪判決を臨床の医師たちはどう見たか(ハフポスト/2019年3月22日)

 さらに言えば、手術直後の麻酔が覚めきっていない女性患者の病床に、1人で2回訪れたことについては、医師側も認めています。被害者の証言では、1回は「看護師と入れ替わりで入ってきた」とされています。

 たとえば乳がん検診などの際に男性医師が触診を行うとき、看護師が立ち会うことが推奨されています。これは患者の不安を払拭することはもちろん、冤罪を防ぐためにも必要な措置です。

 医師が手術後の状況を見るためだったとしても、看護師を伴うことはできなかったのでしょうか。繁忙のためにそれが叶わなかったとするなら、医療界が考えなければならないのは、その状況ではないかと思います。


カルテでは「術後覚醒良好」

 被告人側の弁護士は、被害者が手術後に「ふざけんな、ぶっ殺す」と言ったという看護師の証言を法廷で繰り返しました。「病棟に響き渡るような声で」とも言っていました。

 これまでの報道では、この印象的な発言が注目を集め、被害者がせん妄だったと信じる人が多かったように思います。被害者はこの発言について「記憶にない」と言っています。

 高裁判決では、「ふざけんな、ぶっ殺す」という発言の記録がカルテには残っていないこと、さらにカルテでは被害者がせん妄状態だったとする記述もなく、むしろ「術後覚醒良好」という記載があったことを指摘しています。

 カルテに「術後覚醒良好」と書いていた看護師が、その後弁護士や病院スタッフと話したあとで「半覚醒状態だったと思う」と証言を変えたことについても、一貫した証言とは言えないと判断されました。


ネット上では「再鑑定不可能」の誤解も拡散していた

 今日の法廷では、被害者のA子さんもついたてで区切られた場所で判決を聞いていました。有罪の言い渡しの後、被告人側支援者からは軽い抗議のような声が上がり、ついたての向こうからはすすり泣きが聞こえてきました。

 A子さんにとってみれば、「手術後に担当医からわいせつ行為をされ、自分だけの証言では信用されないと思ったから通報し、証拠採取をしてもらったところDNAが検出された」という事件です。


 一審の裁判中に、弁護側はA子さんの裸の胸の写真を法廷で傍聴席からも見える場所に映そうとし、裁判長が止めたことがあったと聞きます。また、ネット上では鑑定資料が廃棄され、再鑑定が不可能であるという誤解も拡散されていました。

 被害者側を支援する弁護士が「鑑定資料を再鑑定できないかのように報道されているがそれは間違い」と会見で言及するほどでした。

 被害者側にとっては、一審判決前から一部の報道は医師側に不利な情報を載せないなど非常に一方的であり、酷なものに感じていたことと思います。


 控訴審の間も、A子さんにとって、とてもツラい時間だったと思います。本当にお疲れ様でしたと伝えたいです。


※控訴審を審理したのは朝山芳史裁判長。朝山裁判長が退官したため、読み上げを引き継ぎの細田啓介裁判長が行った。新型コロナウイルス感染症の影響により、4月の予定だった判決言い渡しが延期されていた。【訂正のお詫び】審理した裁判長のお名前に誤りがありました。お詫びして訂正します(18時40分)。

https://news.yahoo.co.jp/byline/ogawatamaka/20200713-00187930/



コメント4  乳腺外科医への無罪判決が意味するもの


江川紹子 | ジャーナリスト・神奈川大学特任教授

2019/2/20(水) 22:33


判決後に記者会見をする弁護団(東京・霞が関の司法記者クラブで)

 東京都足立区の病院で、手術直後の女性患者の胸をなめたなどとして、準強制わいせつに問われた乳腺外科医(43)に対し、東京地裁(大川隆男裁判長、内山裕史裁判官、上田佳子裁判官)は20日、「事件があったとするには、合理的疑いを差し挟む余地がある」として無罪とする判決を言い渡した。


被害証言は術後せん妄の幻覚体験の可能性

 

 判決は、被害を訴えるA子さんの証言には迫真性があり、一貫しているとする一方で、母親の証言、他の医師や看護師の証言などを細かく検証。検察側は、病院関係者は口裏合わせをしていて信用できないと主張していたが、裁判所は「大筋において信用できる」と退けた。


 そのうえで、乳房手術は術後せん妄の危険因子であり、手術に使われた麻酔薬や術後の痛みがせん妄の原因になる可能性がある、とする専門医の証言を検討。A子さんにはこの麻酔薬が通常より多く投与される一方、鎮痛剤の投与は少なく、術後に疼痛を訴えていたことから、せん妄状態に陥りやすい状態にあり、それに伴う性的幻覚を体験していた可能性がある、と判断した。


 そして、「A子証言には疑問を差し挟む余地があり、信用性を認めるには、証明力の強い補強証拠が必要」と認定した。


科学鑑定に対する批判

 そこで、A子さんの胸から警察官が採取し微物の鑑定についての検討に入った。警視庁科学捜査研究所でアミラーゼ鑑定、及びDNA型鑑定が行われている。アミラーゼ鑑定は陽性で、外科医のDNA型が検出されている。


 ただし判決は、手術前に外科医が左右の乳房を念入りに触診しているうえ、手術台に横たわった患者をはさんで、助手を務めた先輩医師との間で術式について検討をするなど、唾液の飛沫やDNAが付着する機会は事件の他にもあったと指摘した。


 検察側は、鑑定の結果、微物に大量の医師のDNAが含まれているとして、これを舐めた証拠とみていた。しかし、大量のDNAが検出されたとする根拠は、科捜研研究員が実験ノートに当たるワークシートに記載した数字のみ。研究員は、ワークシートを鉛筆で記入しており、必ずしも時系列でない記載もあったうえ、消しゴムで消して書き直した部分もあった。

 裁判所は、このような記載の仕方を、「刑事裁判の基礎資料の作成方法としてふさわしくない」と厳しく批判。さらに、微物に含まれるDNA量が重要な問題になっていることを知りながら、科捜研がDNA抽出液の残りを廃棄し、再鑑定ができなくなった点についても「非難されるべき行為」と断じた。

 判決は、こうした対応を「検査者としての誠実性に疑念がある」とする一方、「意図的な捏造まではない」として、鑑定の扱いを慎重に検討。最終的に、「仮に信用性があると認めるとしても、その証明力は十分なものとはいえない」と結論づけた。

 この判決は、科学鑑定に厳しく科学性を求め、現場に警鐘を鳴らしたものと言えよう。


長期勾留と報道、ネットで「大きく傷ついた」

 判決言い渡し後の記者会見で、主任弁護人の高野隆弁護士は、「ほぼ完全な、疑問の余地のない無罪判決だ。科捜研の鑑定について、強い言葉で指摘があった。鑑定のやり方に強いインパクトを与えるものだろうし、そうあって欲しい」と科学捜査のあり方に注文をつけた。


主任弁護人の高野隆弁護士

 さらに、「術後せん妄が起きることは、医師たちの間では共有されているが、きちんとした症例報告や対策が行われていない」として、医療界にも対応を求めた。

 無罪となった外科医は、開口一番「ほっとしている。肩の荷が下りた感じだ」と安堵の表情を浮かべた。そのうえで、長期にわたる身柄拘束や報道のあり方について、以下のように述べて関係者の反省を求めた。


「警察の非科学的な捜査により、私は100日以上身体拘束され、社会的信用を失い、職を失い、大変な思いをした。さらに、警察の一方的主張に乗った報道、悪のりしたネットの書き込みによって、私や家族、周囲の人が大きく傷ついた」


裁判が始まる前に刑を受けている問題

 外科医は、2016年8月25日に逮捕され、起訴後も勾留が続いた。同年11月30日に初公判が行われたが、3回目の保釈申請も地裁で却下されされ、ようやく準抗告が認められて12月7日に保釈。身柄拘束の期間は104日間に及んだ。


 高野弁護士は、人質司法の問題を語気強く、次のように指摘した。

「無実の人が、裁判を受けていない段階で、すでに処刑されている。無罪判決が出ても、司法がその責任を免れることはない」


「医療界と警察・検察双方が反省を」

 外科医を支援してきた東京保険医協会の鶴田幸男会長らも記者会見し、検察側は控訴をしないよう求める声明を発表した。

 声明では、控訴すれば医師がより不幸になるだけではなく、「今も性被害体験が現実のものであると誤認し続けている患者さんの不幸をも遷延させる」としている。

 同協会の佐藤一樹理事も会見に同席し、医療界が手術で使う麻酔薬や鎮痛剤、術後管理のガイドラインを検討することの重要性を指摘。「医療界と警察・検察双方が自分たちの問題を見つめて、このような事件が再発しないようにすることが大切」と述べた。

 まさに、ここに今回の判決の意議があると言えるのではないか。


「被害者」は控訴を求める

 その後、A子さんと代理人の弁護士が会見を行い「無罪が出て、本当にびっくりしている」「この事件で無罪になったら性犯罪は立件できない」などと述べ、判決を批判。検察側に強く控訴を求めていることを明らかにした。


会見する上谷さくら弁護士(左)ら

 国選被害者代理人を務めた上谷さくら弁護士は、判決が批判した科捜研の鑑定のやり方について、「今後は運用を変える必要はあると思う」としたうえで、「本件については適正だったと考える」と述べた。


【付記】

 A子さんは、私(江川)が書いた1月19日の記事「乳腺外科医のわいせつ事件はあったのか?~検察・弁護側の主張を整理する」を「嘘ばっかり」と強く非難。「私は『ぶっ殺す』なんて言ってない」「私はせん妄状態じゃない」と繰り返し訴えた。

 「ぶっ殺す」云々は、弁護側がA子さんの状態について、「何度もナースコールをし、その都度看護師がベッドサイドまで来てたことを覚えていない」「検温しようとした看護師に『ふざけんな、ぶっ殺すぞ』と言い、それも記憶にない」などと述べた部分を紹介したもの。ちなみに判決は、この看護師らの証言の信用性を認めている。

 またA子さんは、ネットで実名が特定され、江川の記事を読んだ人などから、嘘をついているかのような非難を受けている、とも述べた。

 私はもちろん、弁護人も裁判所も、A子さんが虚偽の証言をしたとは一言も述べていない。そのような非難は誤りであり、すべきではない。

 裁判での専門家証言によれば、せん妄を診断する基準があり、患者の症状から医師が判断する。せん妄状態での幻覚体験は非常に現実味がある。そのため、医師が幻覚であると説明すると、患者は驚くことが多い。せん妄のために性的幻覚を見ることはよくあり、A子さんの訴える内容は「あまりに典型的」という。

 早い時期に、このような専門家による適切な説明がなされていれば、彼女の認識もまた違ったものになったかもしれない。現実には、刑事手続きを進める中で、被害意識は固定化され、医療への不信感も募っている。具合が悪くても病院にも行かれない、とのことだ。

 医療界は、医療従事者を守るためのみならず、患者がこのような不幸な事態に陥らないためにも、術後せん妄についての対策・対応を、早急にかつ真剣に行って欲しいと願う。

https://news.yahoo.co.jp/byline/egawashoko/20190220-00115538/



乳腺外科医が準強制わいせつに問われた事件で、高裁が逆転有罪判決の衝撃

江川紹子 | ジャーナリスト・神奈川大学特任教授

7/13(月) 20:57


判決後の記者会見で語る高野隆・主任弁護人(左から2人目)ら弁護団


 男性の乳腺外科医が、手術直後の女性患者の胸をなめたとして準強制わいせつ罪に問われたものの、一審の東京地裁では女性の被害の訴えは、麻酔の影響による「術後せん妄」の可能性があるとして、無罪とされてた事件。東京高裁(朝山芳史裁判長、伊藤敏孝裁判官、高森宣裕裁判官)は13日、原判決を破棄し、医師を懲役2年の実刑とする逆転有罪判決を言い渡した。被告・弁護側は記者会見で、「このまま冤罪を放置できない」として、即日上告した。


逆転有罪判決は、支援者にも大きな衝撃を与えた(国民救援会提供)

一審は科捜研の鑑定方法にも疑問符をつけていた

 一審判決では、被害を訴えるA子さんのほか、その母親、他の医師や看護師、同室の患者などの証言を細かく検討し、A子さんの訴えは麻酔薬や痛みの影響による「せん妄」の可能性が否定できない、と判断した。

 さらに、A子さんの胸から採取した微物鑑定を行った警視庁科学捜査研究所の研究員が、実験ノートにあたるワークシートを鉛筆で記載し、少なくとも9カ所を消しゴムで消して書き直していたり、あるいは本件ではDNAの量が争点になることを検察官から知らされた後に、定量検査についてのデータや抽出液を廃棄したために、鑑定結果が検証不能になったりしたことが、一審では問題になった。地裁判決は、「検査者としての誠実性」に疑問符をつけ、鑑定書について「証明力は十分なものとはいえない」とした。


科学的厳密さには欠けてもOK

 これに対して控訴審は判決要旨によると、A子さんの一審証言を「強い証明力を有する」と全面的に評価。科捜研の鑑定についても、DNA定量検査の記録や抽出液の残余を廃棄したことについて、「検証可能性の確保が科学的厳密さの上で重要であるとしても、これがないことが直ちに本件鑑定書の証明力を減じることにならない」として、信用性を認めた。


「非科学的な判決」に弁護団は衝撃

 主任弁護人の高野隆弁護士は、一審で手術後のA子さんの状況を語った3人の看護師証言を高裁が疑問視したことについて、「(高裁は)証言を見ても聞いてもいない、同室の患者の証言もあるのに、一切無視して、(看護師は)病院関係者だから偽証する動機があるなどとして退けた」と批判。


 その一方で、科捜研の鑑定の信用性を認めたことについて、高野弁護士は「裏付けるものが何1つないのに、思い違いや偽証をする動機がない、としてそのまま採用した。科捜研の技官が『ちゃんとやった』と言いさえすれば、何の裏付けがなくても裁判所は信用する。21世紀も20年が経つというのに、こんなに非科学的な裁判が行われ、冤罪が生まれていることに衝撃を受けている」と怒りをにじませた。刑事事件の経験豊富な高野弁護士が、会見の途中「このような裁判に、我々は怒りを通して、どうすればいいか分からないくらいだ」と口走ったところにも、その衝撃の大きさが伺えた。


外科医は「生活が再び壊される」

 有罪判決に被告人の乳腺外科医は「私はやっていません。それにも関わらず、公正であるべき裁判官が公正な判断をしないということに怒りを覚えている。(逮捕・起訴によって)一度壊れた生活を、やっとここまで立て直してきたのに、(有罪判決によって)再びこれが壊されることに憤りを覚える。この生活が守られるよう戦っていく」と語った。


注)リードの「上告する方針を明らかにした」を「即日上告した」に改めました。

https://news.yahoo.co.jp/byline/egawashoko/20200713-00187975/




乳腺外科医のわいせつ事件はあったのか?~検察・弁護側の主張を整理する

江川紹子 | ジャーナリスト・神奈川大学特任教授

2019/1/19(土) 10:38


 2016年に医師が手術直後の女性患者の胸をなめたなどとして準強制わいせつの罪で逮捕・起訴された事件は、今月8日に検察側論告と弁護側の最終弁論が行われ、結審した。検察側は「極めて悪質」「被害者の処罰感情は厳しく、社会的影響も大きい」などとして懲役3年を求刑。弁護側は、女性の訴えは麻酔の影響による「せん妄」がもたらした「性的幻覚」などと主張して無罪を主張した。


女性がLINEで被害を訴える

 事件の経緯は次の通りだ。


 同年5月10日、東京都足立区内の病院で、右胸の腫瘍を切除する手術を受けた30代女性患者のA子さんが、病室に戻った後、主治医の乳腺外科医からわいせつな行為を受けた、と知人にLINEで連絡。その知人が警察に通報した。地元警察署の警察官が病院に駆けつけ、女性の左胸から微物を採取するなど、刑事事件としての捜査を始めた。


14回もの期日間整理手続で争点整理

 同年8月25日、警視庁は女性の主治医でこの病院の非常勤医師(逮捕当時40歳)を逮捕した。医師は一貫して否認。起訴後も身柄拘束されたまま、同年11月30日に東京地裁(大川隆男裁判長)で初公判が行われた。12月になって医師は保釈となり、裁判所は「期日間整理手続」を開くことを決めた。


 期日間整理手続とは、争点を絞り込んだり証拠を整理するための公判準備手続き。14回にわたる期日間整理手続を非公開で行った後、大川裁判長は「争点は事件性である」とした。つまりわいせつ行為が本当にあったのか否か、だ。そして、具体的には次の2点を「実質的な争点」とする書面をまとめた。


裁判の争点(文は裁判所の「争点整理の結果」を江川がまとめた)

 本年9月10日に再開された公判では、この争点整理に従って、まずはA子さんやその知人、母親、手術に立ち会った医師や病室を担当する看護師などの事件関係者、続いてDNA鑑定を行った科捜研研究員や法医学者、せん妄に詳しい医師など専門家の証人尋問が3か月の間に集中的に行われてきた。


「被害証言」は信用できるか

審理が行われている東京地裁

峻烈な処罰感情

 A子さんにとっては、被害は「現実」であり、今なお強烈な被害感情を抱いている。裁判では自身が証言するほか、被害者参加制度を利用し、論告直前に自ら法廷で意見陳述も行った。そこで、否認する被告人を激しく非難。医師としての仕事を続けていることについても「性犯罪者に女性が胸を無防備にさらされている」などと怒りをあらわにした。その最後に「医師免許剥奪はもちろん、今まであなたが楽しんだ分、長い長い実刑判決を望みます」と強い口調で求めるなど、満席の傍聴人が息を飲むほどの峻烈な処罰感情を表明した。


被害証言は信用できるが病院関係者証言は信用できない、と検察

 検察側は論告の中で、A子証言は科捜研の鑑定結果なども整合し、被害状況を語った内容も自然かつ具体的として、「十分信用できる」と強調。「虚偽証言の動機もない」として、信用性があると主張した。

 一方、術後のA子さんの状態を説明している病院の医師や看護師はすべて「虚偽の証言をする動機がある」と論難し、「せん妄」に関する専門家証言も、病院関係者の供述に基づいて「恣意的に判断している」などと批判。被害の訴えは「せん妄による性的幻覚ではない」とした。


被害の訴えは術後のせん妄による幻覚、と弁護側

 これに対し弁護側は、A子証言について、病院関係者らの証言に基づき

・病室に戻ってから痛みを訴えことを覚えていない

・何度もナースコールをし、その都度看護師がベッドサイドまで来てたことを覚えていない

・看護師から検温・血圧測定などをされたことを覚えていない

・検温しようとした看護師に「ふざけんな、ぶっ殺すぞ」と言い、それも記憶にない

・大声で叫んでいるのを同室の患者が聞いているが、それも覚えていない

などの点を指摘。専門医の証言やせん妄の診断基準を引用し、「『乳首を舐められた』などの訴えは、術後せん妄状態下での幻覚だった可能性が高い」と主張した。


「科学性」が問われる科捜研の鑑定

適正、技量十分を強調する検察

 争点2で信用性が問われている科捜研の鑑定は、A子さんの左乳首付近を警察官が拭き取ったガーゼ片を調べたもの。鑑定した科捜研研究員は、被告人のDNAが大量(1.612ng/μl)に含まれる唾液及び口腔内細胞が検出された、と証言している。

 この鑑定が信用できるかどうかは、本裁判の最大の争点と言える。検察側は、採取や保管に関わった警察官らや鑑定を行った研究員に加え、アメリカに留学中の元科捜研研究員を証人に立てた。


論告の中で検察側は、


1)女性警察官がA子さんの左乳首からガーゼで付着物を採取し、直ちに滅菌バッグに入れて封印し、別の警察官が鍵付き冷凍庫で保管し、2日後に科捜研に運んでおり、採取、保管、移動は適正になされていた


2)科捜研に採取物が持ち込まれた時点では、被告人の口腔内細胞は未だ採取されておらず、資料の混同やコンタミネーションはなかった


3)鑑定を行った科捜研研究員は、経験豊富でDNA型鑑定の資格も取得しており知識や技術、技量は充分


などとして、この鑑定の信用性を強調した。

廃棄されたデータや試料、鉛筆書きのワークシート

 

 これに対し弁護側は、最終弁論で「鑑定には客観的裏付けも再現性もなく、科学的信頼性がない」と力説した。

DNA検査イメージ(photolibraryより)

 DNAに関しては、本件ではDNA型よりその量が問題になっている。大量のDNAを検出したのは、医師が舐めて口腔内細胞が含まれた唾液が付着したため、というのが検察側の見立てだからだ。

 ただ、1.612ng/μlという数字は、鑑定を行った科捜研の研究員が作業の過程をメモしたワークシートに書かれているだけ。DNA鑑定の際の増幅曲線や検量線などのデータは廃棄されており、確認ができない。

 しかも、ワークシートは鉛筆で記載され、少なくとも9カ所、消しゴムで消して書き換えた形跡があった。弁護側は、ワークシートは実験ノートに当たり、ボールペンなど書き換えができない筆記具で書くのが常識として、科捜研の対応を批判している。

 鑑定で使用したのはガーゼから抽出したDNA抽出液の一部。その残りが保存されていれば、再鑑定も可能だが、これもすでにない。研究員は残液を「2016年の年末の大掃除の時に廃棄した」と証言している。

 この時期には、被告人が裁判で否認していることが明らかになっており、期日間整理手続が行われることも決まった。鑑定人が証人として呼ばれ、裁判で証拠が厳しく吟味されることは、十分予想できただろうに……。


 弁護側は意図的な廃棄である、と批判。DNA抽出液の廃棄は、「資料の残余又は鑑定後に生じた試料の残余は、再鑑定に配慮し、保存すること」とする警察庁内部通達に反しているとも指摘した。


「背筋が凍る…」と専門家

 そして、再現性がなく、実験ノートの記載も不適切だったSTAP細胞事件を引き合いにして、科捜研鑑定の科学性に大きな疑問符をつけた。

 弁護側証人となった法医学者は、「このような形で実際の刑事鑑定の分析がされているということに、少し背筋が凍るような気持ちになった」と証言している。


 また、微物の採取状況やアミラーゼ鑑定について、写真を残していないことも弁護側は問題視した。アミラーゼは消化酵素の一つで、唾液のほか、尿、血液、鼻水などに含まれる。試薬を溶かした寒天の上に、A子さんの左乳首付近をぬぐったガーゼ片を置いて、色の変化を見る検査を行っているが、写真が1枚もなく、鑑定結果の裏付けがない、と指摘している。

 さらに弁護側は、被告人のDNAやアミラーゼがA子の左乳首付近に付着する機会は多くあったと主張。具体的には、手術前に洗う前の手で左右の胸を入念に触診したことや、2人の医師が手術台に横たわるA子さんをはさんで、切開する範囲を当初の予定より小さくするなどの検討した際に、つばの飛沫が飛んだ可能性などを挙げた。


この「状況」で事件が起こりえたか

 このほか弁護側は最終弁論の中で、争点1に関連し「事件は状況的にありえない」とも主張している。


A子証言の犯行態様

事件があったとされる病室。入り口から入ってすぐ左のカーテンの中にA子さんのベッドがあった

 裁判でA子さんが訴えた被害は、一瞬舐められたといった程度のものではない。

「乳首のあたりを、すごい吸い付くように、かぷっと舐めたり吸ったりして、よだれとかもべちょべちょですごく気持ち悪かった」

 しかも舐められていた時間は「5分以内」というのだから、それなりの時間続いたようだ。A子さんがナースコールで呼んだ看護師が来ると、医師は逃げるように出て行った、という。

 その約30分後に、医師は再びベッドサイドにやってきて、今度はA子さんの胸を見ながら、手をズボンの中に入れてマスターベーションをしていた、とも証言した。


弁護人が指摘する「状況」

 一方、弁護人が指摘する「状況」とは、たとえば次の諸点である。

・事件があったとされるのは、4人部屋で当日は満床だった

・A子さんのベッドは出入り口のすぐ横で、しかも入り口の扉は常時開け放たれていた

・隣のベッドとは1メートルしか離れておらず、遮るのは薄いカーテンのみ。しかも、そのカーテンは床から35センチまでしかなかった

・病室には、医師や看護師などが頻繁に出入りしていた

・A子さんはナースコールを手にしていて、実際に45分ほどの間に7、8回鳴らし、その都度担当看護師がベッドサイドに来ている

・外科手術後の患者の皮膚には血液や体液が付着しており、感染リスクを知っている医師が舐めるなどというのはありえない


事件があったとされる病室の見取図。波線はカーテン。4人部屋で満床。A子さんのベッドは入ってすぐの左手。医師は左側からわいせつ行為をしたとA子さんは証言した

 さらに、医師が着ていた手術衣ズボンのウェストは、ゴムではなく紐で結ぶもので、手を入れて自慰行為をするのは不可能。ひもをほどけばズボンが下に落ちてしまう。証言通りの行為は物理的にありえない、と弁護側は指摘した。


検察側主張のリアリティ

 ここからは私見が入る。

 検察側は言及しなかったが、こうした「状況」は、本件を考えるうえで、実は大事なポイントではないか、と思う。

 つまり、A子証言に基づいた検察側主張のリアリティの問題だ。


 被告人質問によれば、被告人は当時、2つの医療機関で週に222~280人の患者を診察していた。そのうち1つのクリニックの患者で、手術が必要な場合、「事件」の現場となった病院で行っていた。手術をするのは月に6,7人。A子さんもその1人だった。

 被告人は乳腺外科の専門医で、患者のほとんどは女性。乳房を触ってしこりを調べたり、乳頭をつまんで分泌物の有無を確認するなど、女性の胸に触れることが、いわば日常業務だった。これまで、患者から性的被害を訴えられたことはない、という。

 A子さんの主治医となったのは2011年から。翌12年に右乳房の腫瘍の切除を行い、その後も3か月ないし6か月ごとの定期検査を行っていた。そして、再び右側に腫瘍ができたので手術をすることになった経緯がある。

 しかも、当日はA子さんの母親が付き添いのために病院に来ていた。医師が2度目に病室を訪れた時には、母親はA子さんのベッドサイドにいた。診察があるというのでカーテンの外側に出たが、廊下に出ることなく、ベッドのすぐ近くにいた。

 女性の胸が仕事の対象であり、週に数百人もの胸を診ている乳腺外科医が、5年間診てきた1人の患者に対し、手術の直後に、人が頻繁に出入りする病室の、隣のベッドからは気配が分かる位置で、いきなり欲情して胸にむしゃぶりつき、一定時間なめ続け、さらに、カーテンのすぐ外に患者の母親がいるのが分かっていてマスターベーションまで行う……。

 あまりにも現実離れしてはいないだろうか。

事件があったとされる病室を内側から見たところ。右側カーテン奥にA子さんのベッドがあった。隣のベッド(右手前)との間隔は1メートルほど。仕切りはカーテンのみ

「合理的疑い」を超えた証明はなされているか

 だからと言って、100%やってないとは言い切れない、という意見もあろう。


 しかし刑事裁判は、被告人の側が100%無実であることを証明する場ではない。有罪とするには、事件があって、被告人が犯人であると、「合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証」を検察側が立証しなければならない。

 「合理的な疑い」とは、つまり通常人なら誰もが抱くような疑問だ。

 検察側の主張に見るリアリティの欠如は、「合理的な疑い」と言えないだろうか。この疑問を封じるほどの説得力を、検察側が根拠にする鑑定が持っているのかが問われている。

 最後に発言の機会を与えられた被告人は、短く次のように述べた。

「患者さんの安全はもちろん、医療者側の安全も守られる必要があります。公明正大な判断を望みます」


 判決は、来月20日に言い渡される。




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