平成30年(ワ)第4206号 損害賠償請求事件
準備書面 2
横浜地方裁判所第4民事部合議A係 御中
平成31年4月8日
本書面は3月29日付け神奈川県弁護士会準備書面に対する追加準備書面2である。
最初に、神奈川県弁護士会の準備書面の内容責任については神奈川県弁護士会にあることを確認いただきたい。また、以下は代理人弁護士であることを確認いただきたい。
被告神奈川県弁護士会訴訟代理人弁護士 水地 啓子
(主任) 同訴訟代理人弁護士 森田 明
同訴訟代理人弁護士 二川 裕之
まずもって裁判長および地裁法廷関係者には心から敬意を表する。
ご承知のとおり、この裁判は初物づくしなのである。
戦後の混乱の中で、なんと言っても一番は朝鮮人と共産党の蛮行であった。数々の隠蔽とねつ造工作、そしてその実態が、法廷の場にさらされはじめている。韓国大統領李明博の日本乗っ取り完了宣言からちょうど10年である。
戦後70年有余、彼らが弱者の知恵を駆使して築き上げてきた日本乗っ取り作戦の全貌が見えてきた。「その実態を日本人が知る」ということが「戦後の清算」の焦点であったが、やっとそれが裁判所という公の場に登場することになったのである。
冒頭の「裁判長及び地裁法廷関係者への敬意」とは、本裁判が、国民注視の中で行われる彼らの悪行の実態を裁く初めての本格的裁判であり、心身ともにご苦労をかけることや、この問題の大きさと彼らの抵抗がいかにすさまじいものかを思量するとき、日本人ならすべてが抱く思いを表したものである。
被告準備書面の個々の問題は、あまりにも重大かつ重要なので公判で争うとして、とりあえず本書面では問題点をピックアップあるいは太字で指摘しておくこととする。
2 同第 2 (「当事者」)について
懲戒請求リストの提出が必須である。こちらの保管リストとはまったく違う。
(3pまで略)
第 2 被告弁護士会の主張
1 被告弁護士会における懲戒手続の概観
( 1 ) 懲戒手続の流れについて
ア一般に、被告弁護士会に所属する弁護士に対する懲戒請求がなされた場合、被告弁護士会は、神奈川県弁護士会綱紀委員会及び綱紀手続に関する会規( 丙 2 、以下「会規」という。)に基づき、事案の処理をしている。手続の流れにつき、以下説明する。
(ア)被告弁護士会は、懲戒請求を受け付けると、事務局において受信処理をした上、綱紀委員会に調査請求をする( 弁護士法 58 条 2 項、会規 23 条)。
(イ)被告弁護士会は、対象弁護士に対して、調査開始通知書を送達する( 会規 26 条 1 項)。その際 、あわせて弁明書の提出依頼をする( 会規 27 条 1 項、2 項)。
その調査開始通知書には、会規 26条 2項各号所定の各事項を記載しなければならないが、そのうち、2 号の「調査を求めた事案」に関する事項については、懲戒請求書の副本又は謄本を添付することをもって代えることができるとされている( 同 2 号括弧書き)。
実際の運用としては、後記オに記載する平成 30年 3月から施行された手続を適用する場合を除き、会規 26 条 2 項 2 号括弧書きに基づき懲戒請求書の副本又は謄本を添付することとしてきた。
なお、被告弁護士会は、懲戒請求者に対しても、会規 26 条 2 項1 号に規定する事項( 綱紀委員会に事案の調査をさせたこと) を記載した調査開始通知書を送付する( 会規 26 条 1 項、4 項)。
( ウ)その後、綱紀委員会は、会規 28 条ないし 50 条に従って事案の調査をする。
(エ)綱紀委員会は、調査の結果、対象弁護士につき懲戒委員会に事案の審査を求めることを相当と認めるときは、その旨の議決をする( 会規 51 条 1 項)。
他方、綱紀委員会は、調査の結果、懲戒の請求が不適法であると認めるとき若しくは対象弁護士につき懲戒の手続を開始することができないものであると認めるとき、対象弁護士につき懲戒の事由がないと認めるとき又は事案の軽重その他情状を考慮して懲戒すべきでないことが明らかであると認めるときは、懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とする議決をする(会規51 条 2 項)。
そして、綱紀委員会は、上記いずれの場合も、議決後は議決書を作成した上( 会規 52 条)、被告弁護士会に報告する( 会規 53 条)。
( オ) 綱紀委員会が会規 51条1項に基づく議決をしたときは、被告弁護士会は、懲戒委員会に事案の審査を求める( 会規 55 条 1 項)。
他方、綱紀委員会が会規 51条 2項に基づく議決をしたときは、被告弁護士会は、対象弁護士を懲戒しない旨の決定をする(会規55 条 2 項)。
(力)被告弁護士会は、対象弁護士、懲戒請求者等に対して、議決書の謄本又は抄本を添付して、決定内容を書面により通知する
(会規 56 条 1 項、2 項)。その際 、懲戒請求者に対しては、異議の申出ができる旨の教示を行う(会規 57 条)。なお、当該通知は、文書の送達によって行う( 会規 56 条 4 項)。具体的には、送達すべき者に交付し、又は配達証明取扱いの書留郵便によって行う
(会規 13 条 1 項)。
イ 日本弁護士連合会( 以下「日弁連」という。)は、平成 29 年 12 月 25 日に「全国各地における弁護士会員多数に対する懲戒請求についての会長談話」(丙 3) を発表した。その経緯については、当該談話中に端的に示されているので、以下、一部引用する。
「近時、当連合会や弁護士会が一定の意見表明を行ったことについて、全国の 21弁護士会に対して、800 名を超える者から、その所属弁護士全員を懲戒することを求める旨記載した書面が特定の団体を通じて送付されてきている。これらは、懲戒請求の形をとりながらも、その内容は弁護士会活動に対して反対の意見を表明し、これを批判するものであり、個々の弁護士の非行を問題とするものではない。弁護士懲戒制度は、個々の弁護士の非行につきこれを糾すものであるから、これらを弁護士に対する懲戒請求として取り上げることは相当ではない。 私は、本年 1 2 月 21 、22日開催の当連合会理事会において、各弁護士会の会長である当連合会理事にこの旨をお伝えした。各弁護士会においてしかるべく対処されることを期待する。」
ウ上記の日弁連の動きを受け、被告弁護士会は、平成 29 年 1 2 月26 日に「当会の多数の会員に対する懲戒請求についての会長談話」(丙 4) を発表した。以下、一部引用する。
「今般、特定の団体が、神奈川県弁護士会所属弁護士全員を懲戒することを求める書面を、約 1 , 000 名からとりまとめ、神奈川県弁護士会に送付しました。
しかしながら、これらの書面は、日本弁護士連合会が会長声明を発したことを理由とするもので、弁護士法に基づき個々の弁護士の非行を糾す弁護士懲戒制度にはそぐわないものです。
このため、神奈川県弁護士会は、これらの書面を、この声明に対する反対のご意見としては承りますが、懲戒請求としては受理しないことといたしました。」
工 その後も、日弁連では大量懲戒請求に対する弁護士会の対応に関して検討を重ね、平成 30 年 2 月 6 日付で日弁連事務総長通知「大量懲戒請求への対応について( 通知)」(丙 5 ) を発した。同通知により、大量懲戒請求であって、一見して懲戒事由がないことが明白な場合には、前記アで述べた一般的な手続の流れよりも簡易な手続によることができるとされた。
具体的には、
(ア)綱紀委員会の調査手続に付すが、綱紀委員会において即日又はこれに近い短時日に迅速な処理を行う。この場合においては、各会の会規に必要に応じて改正を加えることにより、対象弁護士に対して弁明書の提出を求めない扱いも可とする。
(イ)上記(ア)の手続を行う場合には、綱紀委員会の調査の結果懲戒をしないとの弁護士会の決定が出た場合に、その段階で、
①綱紀委員会に調査をさせたこと及び②対象弁護士を懲戒しない旨の決定をしたことを、併せて懲戒請求者及び対象弁護士に通知することも可とする。
(ウ)綱紀委員会に調査をさせたことの通知及び対象弁護士を懲戒しない旨の決定をしたことの通知(上記(イ)によりこれらを併せて通知する場合を含む。)は、各会の会規につき所要の改正を行うことにより、必ずしも配達証明付きの郵便によらずとも、一般書留、簡易書留、特定記録郵便のような郵便物の郵便局による引受が証明され、特定の住所宛に配達されたこと及びその日時が何らかの形で追跡できる方法による書面通知をもってすることも可とする。
とされた。
そして、上記日弁連事務総長通知の趣旨に沿って、被告弁護士会においても、会規の一部改正を行い 、会規 13 条 1 項にただし書を、会規 26 条 2 項にただし書をそれぞれ追加するとともに、会規 27 条に 3 項を新設するなどし、日弁連の承認を得た平成 30 年 3 月 15 日から改正規定を施行した。
オ前記エの経過を経て、平成 30 年 3 月 15 日以降、被告弁護士会において行う簡易な処理手続の流れは、以下のとおりである。
(ア)被告は、懲戒請求を受け付けると、事務局において受信処理をした上、綱紀委員会に調査請求をする( 弁護士法 58 条 2 項、会規 23 条)。
(イ)綱紀委員会は、会規 28 条ないし 50 条に従って事案の調査をするが、対象弁護士につき懲戒すべきでないことが一見して明らかであると認めるときには、対象弁護士に対して弁明書の提出を求めない( 会規 27 条 3 項)。
(ウ)綱紀委員会は、調査の結果、懲戒の請求が不適法であると認めるとき若しくは対象弁護士につき懲戒の手続を開始することができないものであると認めるとき、対象弁護士につき懲戒の事由がないと認めるとき又は事案の軽重その他情状を考慮して懲戒すべきでないことが明らかであると認めるときは、懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とする議決をし( 会規 51 条2 項)、議決書を作成した上( 会規 52 条)、被告弁護士会に報告する( 会規 53 条)。
(エ)綱紀委員会の上記議決を受け、被告弁護士会は、対象弁護士を懲戒しない旨の決定をする(会規 55 条)。
( オ)被告弁護士会は、対象弁護士・懲戒請求者等に対して、調査開始通知書( 会規 26 条 l 項) とともに、議決書の謄本又は抄本を添付して、決定内容を書面により通知する( 会規 56 条 2 項・4 項)。なお、これらの通 知は、文書の送達によって行うが( 会規 56 条 4 項。文書の送達方法は会規 13 条 1 項本文を参照)、特別の事情があるときは、配達証明扱いによらない書留郵便(簡易書留郵便を含む。)又は特定記録郵便によって行うことができる
(会規 13 条 1 項ただし書)。
( 2 )懲戒手続における懲戒請求者の地位について
ア 懲戒制度は、弁護士自治の根幹をなすものである。そして、弁護士自治が必要とされるのは、国家権力と国民の基本的人権とが衝突する場合、弁護士は国家権力と対決することにならざるをえないが、弁護士が裁判所や法務大臣等の国家機関の監督に服していたのでは、その使命を全うすることが難しくなり、これがひいては国民の基本的人権に対する侵害にもつながるからである。
イ そこで、弁護士法 58 条 1 項は、何人も弁護士について懲戒事由があると思料するときは所属弁護士会に対して懲戒請求をすることができる旨規定している。この規定の趣旨は、弁護士の懲戒権を弁護士会の自治権能の一つとして認めるとともに、その自治権能が適切に行使されるように何人にも懲戒請求を可能ならしめたものである。
懲戒請求は、弁護士会による懲戒権という公の権能が適切に発動され、公正に運用されることを担保するものであり、そのことにより、弁護士の職務の公共性に基づく職務執行の誠実性と品位の保持を確保することを目的とする。したがって、懲戒請求は、個々の被害者救済を直接の目的とするものではない(最高裁昭和38 年 10 月 18 日判決、最高裁昭和 49 年 11 月 8 日判決など)。このような目的および性質からすれば、懲戒請求は、弁護士会の自治権能の一つとしての懲戒権の発動を促す申立てであり、懲戒権発動のいわば端緒となるものにすぎない。
ウ 以上からも明らかなように、懲戒手続は、あくまで弁護士と所属弁護士会との間の法律関係であることから、懲戒請求者は懲戒手続における当事者とはいえない。
しかしながら、懲戒請求者は、綱紀委員会及び懲戒委員会の調査手続において、陳述、説明又は資料の提出を求められることがある( 法 70 条の 7 、同 67 条 3 項)。また、懲戒請求者は、所属弁護士会が対象弁護士を懲戒しない旨の決定をしたことにつき不服がある場合には、日本弁護士連合会に対し、異議の申出( 法 64 条 1 項)や綱紀審査の申出( 法 64 条の 3 第 1 項)をすることができる。これらの弁護士法の各規定からすれば、懲戒請求者には、公益的見地から、当事者に準ずる一定の権能が与えられているものである。
2 原告ら及び選定者らによると思われる懲戒請求の経過
(9p~10pまで中略)
上記綱紀委員会に対する調査請求書には、懲戒請求者、懲戒請求日及び対象弁護士の一覧表と、懲戒事由は添付懲戒請求書記載のとおりとして、各懲戒請求書を添付している。
各請求者に対する調査開始通知書には、調査を開始した旨のほか、弁護士法64条による異議申し立てについても記載されており、対象弁護士に対する調査開始通知書には、対象弁護士に対して、別紙懲戒請求書記載の通りの懲戒の請求があり、綱紀委員会に調査を求めたことが記載されており、事案番号、懲戒請求者の住所、氏名及び請求書記載日を記載した請求者一覧表と各懲戒請求書が添付されている。
(11p~13pまで中略)
3 原告らの主張に対する反論
( 1 ) 反論の要点
以下に述べる、原告らの主張に対する被告弁護士会の反論の要点は次のとおりである。
第 1に 、被告弁護士会が懲戒請求を受けた弁護士に 対し、懲戒請求者の氏名及び住所を含む懲戒請求の内容を通知することは、被告弁護士会の会規に基づき、通常の手続として行われていることであり、弁護士会の懲戒制度の性格から、必要かつ合理的な手続であること。
第 2 に、上記の通知に当たり、通知内容の利用の制限その他格別の告知等をしなかったことが違法とは言えないこと。
第 3 に、被告三弁護士が行ったと原告らが主張する行為について、被告弁護士会が責任を負う根拠はないこと。
( 2 ) 反論に当たっての考え方
被告弁護士会が原告らの主張に反論するに当たって前提となる懲戒請求の内容は、上記2 記載のように多岐にわたり、かつその時期や判断経過も異なる。
したがって、被告弁護士会に直接関わる事実に限っても、個々の原告及び選定人について、少なくとも「いつ(懲戒請求の年月日)」、「いかなる内容の懲戒請求を(甲1 の雛形を用いたのか、そうでなければどのような内容か)」「どの弁護士を対象に(被告三弁護士全員かその一部か)」したのか、「懲戒請求者の氏名住所等が対象弁護士に通知されることを予測していたのか否か」「通知されることでどのような不利益をこうむったのか」などの事実が具体的に主張されるべきである。
そして、最終的には個々の原告及び選定人についてこれらの事実が認定され なければならないから、被告弁護士会には、個々の原告及び選定人に関するこれらの事実について反論する機会が与えられなければならない。
その際、選定人らについて住所が明示されない状況では、選定人を特定することができず、正確な認否及び反論は困難である。
しかし、原告らが選定者らの住所を秘匿して正確に特定することを困難にしたままで進行することを求めていることからすれば、今後も個々の選定者についての個別事情を主張立証する意図はないと考えざるを得ない。
そして裁判所も、当面、原告らが被告らに選定人らの住所を開示しないまま進行することを是認していることから、現時点においては、原告らの主張を前提に、可能な範囲で反論するものである。
( 3 ) 対象弁護士に懲戒請求者の氏名及び住所を含む懲戒請求書の写しを送付するのは適法かつ正当であること
ア通常の手続であること
前記 1 ( 1 ) ア(イ)に述べたように、懲戒請求を受け付けた後、対象弁護士に送付する調査開始通知書に、懲戒請求書の副本又は謄本を添付して送付することは、被告弁護士会の会規に基づいて、通常の手続として行われているところである。
イ必要性・合理性がある手続であること
対象弁護士は、事案が懲戒の手続に付されることにより手続が結了するまでは他弁護士会への登録換え又は登録取消しの請求をすることができなくなるという不利益を負う( 法 62 条 1 項)。また、対象弁護士は、根拠のない懲戒請求を受けた場合には、名誉、 信用等を不当に侵害されるおそれがあり、また、その弁明を余儀なくされる負担を負うことになる。
対象弁護士にとって、適切な弁明等の防御をするためには、いかなる者からの懲戒請求であることを知る必要性は極めて高い。また、当該懲戒請求が濫用的な懲戒請求の場合には、違法な懲戒請求として不法行為が成立することがある( 最高裁平成 19 年 4 月 24 日判決、丙 6) ことからすれば、懲戒請求者がいかなる者であるかを知る一層の必要性がある。
ウ懲戒請求者にも予測可能であること
前述のとおり、懲戒請求者は、懲戒手続の当事者ではないものの、綱紀委員会や懲戒委員会の調査手続において、陳述、説明又は資料の提出を求められることがある(法70条の 7 、同 67 条 3 項) 他、所属弁護士会が対象弁護士を懲戒しない旨の決定をしたことにつき不服がある場合には、日本弁護士連合会に対し、異議の申出(法64条1項) や綱紀審査の申出( 法 64 条の 3 第 1 項)をすることができる。これらのことは弁護士法に明記されているところである(丙 1) 。
かかる立場にある懲戒請求者が誰であるかについて、対象弁護士が知らされることなく手続が進められることが合理的とは言いがたく、懲戒請求をしようとする者は、自己の氏名及び住所を含む懲戒請求内容が対象弁護士に伝えられることを予測することはできたはずである。
( 4 ) 原告らの言う「告知義務」等は認められないこと
ア 原告らは、被告弁護士会には「懲戒請求者の個人情報の取扱いについて事前に告知する義務がある」(訴状8 頁)、「懲戒請求の受付後であっても、懲戒手続終了までの合理的な期間内に、制度利用上の注意喚起と個人情報の取扱いに関する意向確認を実施すべきという事後の確認義務が生じる」(同9 頁)、
「簡便かつ容易な保護措置を実施する義務があるのに、簡便で容易なマスキングすらせず」(同10 頁)などと 主張するが、これらの「義務」はいずれも法律上の根拠を欠くものである。
イ しかも氏名及び住所のマスキング等により懲戒請求者が誰であるかを対象弁護士にわからないようにすることは、前記の( 3 ) イに述べた、懲戒手続において対象弁護士に適切な防御の機会を保障するという観点からはむしろ不 適切である。
ウ 原告らは、これらの「義務」を論じる前提として、弁護士が懲戒請求を受けた場合、「自己の知識、経験及び人脈を最大限に活用し、懲戒請求者に対して、合法を装った報復を企て、それを実行に移すおそれがある」から、懲戒請求者の個人情報を対象弁護士へ無条件に交付すれば、対象弁護士がそれを懲戒請求外(目的外)で流用して、懲戒請求者への提訴、告訴又は裁判外での金銭要求といった合法を装った報復を行い、紛争化することはきわめて容易に予見で きる」から、「弁護士会にはこの流用と紛争化を防止する義務がある」という
(同11 から 12 頁)。
しかし、前記最高裁平成19 年 4 月 24 日判決(丙 6) は、「懲戒請求が弁護士懲戒制度の趣旨目的に照らし相当性を欠くと認められるときには、違法な懲戒請求として不法行為を構成する」と判示しており、根拠のないことを知りうるのにあえてした懲戒請求の場合、懲戒請求者に責任を問うことは正当な行為である。上記最高裁判決は、懲戒請求者に対し50 万円の損害賠償を命じており、他にも不当な懲戒請求をした者に対して損害賠償を命じた判決は多数ある。
すなわち、最近のものに限っても、東京地判平成25 年 3 月 22 日 (2 件で 30万円を認容)、東京地判平成26 年 7 月 9 日(他の理由とあわせて100 万円を認容)、東京地判平成28 年 11 月 15 日(反復的な懲戒請求と紛議懲戒申立てをあわせて 140 万円を認容)、東京地裁平成29 年 10 月 25 日(他の理由とあわせて30 万円を認容)がある。
そもそも、根拠のない懲戒請求をした懲戒請求者に法的責任を生ずることは、個々の法文や裁判例を知らなくとも、常識的に認識しうることである。不当な懲戒請求を受けた弁護士には、それに対抗するための正当な権利行使が認められるべきである。そして、専門家である弁護士は、通常、法的責任が生じない場合に損害賠償請求をするとは考えられないから、懲戒請求を受けた弁護士が「懲戒請求者に対して、合法を装った報復を企て、それを実行に移すおそれがある」との認識を前提とする弁護士会の「義務」は認められない。
( 5 ) 他士業との比較
原告らは、司法書士会等の他士業及びそれらの各監督官庁は、懲戒制度の運用において懲戒請求者の個人情報(氏名及び住所)を懲戒請求の対象者に交付していないので、被告弁護士会の運用は異常である、とする(訴状 15 頁、23 頁)。
しかし、弁護士の懲戒手続は他の士業とは異なる。このことは、原告らの引用する甲号証の記載からもうかがわれる。
すなわち、国税庁の回答(甲7③) では、「税理士に対する懲戒処分は、士業団体(日弁連、弁護士会)が懲戒権者となっている弁護士とは異なり、財務大臣の権限とされており」と述べており、厚労省の社会保険労務士の懲戒に関する回答(甲7⑤) でも「社会保険労務士に対する懲戒処分は、所属弁護士会が懲戒権者となっている弁護士とは異なり、厚生労働省の職員が事実関係を調査する」として、弁護士会の懲戒手続との違いを明記している。
また、日本司法書士連合会の回答(甲7①) では、司法書士の懲戒権は法務局又は地方法務局の長にあり、各司法書士会及び日本司法書士連合会にはない」とし、日本行政書士連合会の回答(甲 7④) では、行政書士又は行政書士法人に対する懲戒処分は…都道府県知事が行う」「日本行政書士連合会及び都道府県行政書士会は関与しておりません」としており、これらの回答も同趣旨である。
これらの回答からすれば、弁護士に対する懲戒手続がこれら他士業とは異なる制度になっていることがわかる。そして、他士業の懲戒手続において懲戒請求 者の氏名住所等を懲戒の対象者に知らせないこととしているとしても、懲戒制度の仕組みが異なる弁護士会について同様にすべきであるとの根拠にはならないことはこれらの回答からも明らかである。
弁護士に対する懲戒制度は他の士業とは異なり、懲戒手続は懲戒請求があってはじめて開始することができ(法58 条 1 項、2 項、会規 23 条、24 条)、前記
( 3 ) ウに述べたように懲戒請求者は、陳述、説明又は資料の提出を求められることがあり(法67 条 3 項、同 70 条の 7) 、また、懲戒しない旨の決定に対して
は異議の申出(法64 条第 1 項)や綱紀審査の申出(法64 条の 3 第 1 項)ができる。
このように、他の士業における懲戒手続に比べて、弁護士の懲戒手続における懲戒請求者には、より積極的な関与が認められているのであり、同列に論ずることはできない。このような立場にある以上、懲戒請求者の氏名住所等の情報を対象弁護士に知らせるのは当然のことである。
( 6 ) 被告らの共同性
原告らは、「被告弁護士会は、弁護士法により、被告三弁護士を監督する立場にあり、逆に、被告三弁護士は、被告弁護士会の総会決議や会務に参加することを通じ、懲戒制度を含む会規の制定や運用に影響を与えるという関係にあり、被告らには、弁護士制度の特性に基づく特殊な一体性がある」と主張する(訴1状4 頁、23 頁)。
そもそも、原告らの言う「弁護士制度の特性に基づく特殊な一体性」が何を意味するか自体不明であるが、被告弁護士会と被告三弁護士の間に共同責任を発生させるような「特殊な一体性」はなく、共同責任が発生する理由はない。
弁護士法31 条 1 項は、弁護士会が、弁護士の氏名及び職務にかんがみ、その品位を保持し、事務の改善進歩を図るため、弁護士の指導、連絡及び監督をする旨規定する。しかし、弁護士会による指導、監督は、個々の弁護士の職務の独立性を侵害しないように行使しなければならない。弁護士会が個々の弁護士の言動一般について日常的にその是非を調査、判断するものではない。
( 7 ) 会長声明等が違法であるとの点について
原告らは、被告弁護士会や日弁連の会長声明等が違法行為である等と非難し、それが「政治的にも経済的にも北朝鮮を増長させる一因となり、核兵器とミサイルの開発と実験及びいわゆる従軍慰安婦問題の捏造といった日本国と国民の主権、尊厳、名誉、生命、身体、財産等に損害を生じさせ、又はそのおそれを高め続けてきたことが、本件懲戒請求の発端である。」として、これを被告らの違法性及び共同責任が加重される事情として主張する(訴状15 から 17 頁、23 から 24 頁)。
しかし、本件訴訟においてかかる主張が法的に意味のあるものとは言い難い。
被告弁護士会や日弁連が団体として意見を表明する権利は尊重されなければならない。もとより、それに対して反対の意見を述べることも自由である。しかし、反対の意思表明のために懲戒請求や損害賠償請求を行うのは制度趣旨にそぐわないものといわざるを得ない。
4 結論
よって、原告らの請求は棄却されるべきである。 以上
(注)明らかな誤字、変換ミス等8カ所についてはすべてこちらで訂正した。
以上を神奈川県弁護士会の準備書面に対して追加する。
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