ここでも弁護士を原告、懲戒請求者を被告と表示する)
一連の訴訟は、「受忍限度の範囲内にとどまると判断される可能性が極めて高い軽微な損害」について、「すでに他の懲戒請求人から賠償金名目で金員を受領し損害が填補されており、もはや請求すべき賠償金は無いにも関わらず、もっぱら被告を訴訟の内外で攻撃し、被告及び一般人に向けて懲戒請求を萎縮させ抑止する目的で、損害賠償請求の名を借りて提起されたものであり、訴権の濫用であるから、不適法なものとして却下されるべきである。
(東京高裁の判示)
訴権の濫用について、東京高裁平成13年1月31日判決は次のように判示する。
「当該訴えが、もっぱら相手方当事者を被告の立場に置き、審理に対応することを余儀なくさせることにより、訴訟上又は訴訟外において相手方当事者を困惑させることを目的とし、あるいは訴訟が係属、審理されていること自体を社会的に誇示することにより、相手方当事者に対して有形・無形の不利益・負担若しくは打撃を与えることを目的として提起されたものであり、右訴訟を維持することが前記民事訴訟制度の趣旨・目的に照らして著しく相当性を欠き、信義に反すると認められた場合には、当該訴えの提起は、訴権を濫用する不適法なものとして、却下を免れないと解するのが相当である」。
本件は、次の諸事情があるから、東京高裁の要件に照らし、訴権の濫用に当たることが明らかである。
(既に損害が填補されていること)
本件は不法行為に基づく損害賠償請求訴訟であり、つまり、損害賠償は被害者に生じた損害の填補を目的とするものである。
しかし、原告らは、多数の懲戒請求人らに対し、訴訟前の和解を打診する手紙を送付しており、平成30年5月14日時点で「複数の方から当事務所宛てに和解のご連絡がきて」いる状態であった。神原元は「訴訟前に和解が成立した方を除き、最終的には請求者全員に裁判所までお越し頂きたい」と公言している。
「複数の方から和解のご連絡がきて」「訴訟前に和解が成立した方」がいるのであれば、既にその方々から損害は填補され、もはや請求する賠償金は無いはずである。
原告らは訴状で、「本件懲戒請求に対応するため、弁明書の作成等の反証活動に時間と労力を費やさざるを得ない立場に置かれたのであり、これによる精神的苦痛」などと主張している。
しかし本件懲戒請求は他の多数の請求人からの懲戒請求と一緒に一括で処理され、そこで原告らが為した弁明活動は、懲戒請求書に具体的な懲戒事由の記載が無い旨を言うだけの、ほんの数行のものに過ぎない。
ちなみに神原元が訴状作成に要したのはわずか2時間であり、弁明はその訴状に出て来る数行だけであるから、ほんの数分で書けたものと思われる。
弁護士が数分で数行の反論を書かされることなど、優に受忍限度の範囲内であるが、仮に損害であると仮定しても、数千円であろう。百歩譲っても1万円である。
そうすると、原告らの損害は別の懲戒請求人との間での訴訟前の和解により、既に填補されており、もはや請求すべき賠償金は無い。
それにもかかわらず、原告らは各自金50万円という法外な慰謝料を請求して訴えを起こしている。
しかも神原元によれば懲戒請求人は1000人を超えるといい、「最終的には全員に裁判所までお越し頂きたい」といっている。
50万円×1000人は5億円である。5億円の慰謝料など観念できないことは、弁護士であれば常識である。
したがって本件提訴の目的は、原告らの損害の填補にあるのではない。原告らはもっぱら、懲戒請求者をして裁判所まで来ることを余儀なくさせることにより、困惑させることを目的としているのである。
(訴訟追行の負担の圧倒的格差)
原告らは、訴額が簡裁管轄であるにもかかわらず、弁護士しか代理人になれない地裁に敢えて提訴している。一般人にとって平日の昼間に裁判所に出頭することは負担が大きいし、代理人として弁護士を立てることも金銭的負担が大きい。それに比べ、原告らは弁護士であるから、平日の昼間の出頭は容易であるし、弁護士費用も不要である。
原告神原はツイッターで、訴訟の追行が気軽で容易なことを繰り返し書いている。曰く「急ごしらえ、なんせ懲戒却下の通知が来た翌日に提訴。訴状の起案時間は2時間程度」「各地の弁護士がランダムに、気まぐれに、お気軽に提訴できる」
「目標は最低一人一件(被告一人)。」
「個別訴訟はロシアン・ルーレット方式で継続」
「飲み代くらいは稼げる(^.^)。ちょっとした話のネタになる。」
「互いに委任状を出しあって、全国各地で訴えてもいいね」
「全国の先生で私に委任状を下されば、提訴いたします。」
「俺もいろんな人に代理人を依頼しようかぁ?(^.^)」等。
このように、弁護士である原告らにとって、本件訴訟の追行はほぼ負担が無い。ロシアン・ルーレット方式でランダムに被告を選び、飲み代稼ぎと、ちょっとした話のネタにするための、ゲームである。
反面、一般人である被告にとっては非常に負担が重い。その被告の負担は、弁護士しか代理人になれない地裁に提訴されたことで、一層重くなっている。
専ら原告らの提訴目的が、被告にダメージを与えることのみにあることは明らかである。
このため、弁護士しか代理人になれない地裁でも、本人訴訟選定代理人訴訟という手段で対応しているのであるが、なんと東京地裁の複数の民事部で選定代理人の手続きについてクレームが付いている。東京弁護士会と日弁連の関係と、NHK関係では3件が棚ざらしになり、東京弁護士会と日弁連その他の件は取り下げている。なにしろNHKの関係では、署名捺印された選定書が信じられないという書記官名も担当裁判官の氏名もまったく記載されていない事務連絡書が発出されている始末である。
明らかに司法汚染が疑われる事態である。展開次第では担当裁判官あるいは書記官の責任を問うことになろう。
こちらとしては500人がだめなら、10人ずつに分ければいいだけの話である。別にどうってことはない。
(萎縮効果を目的とした不当訴訟(スラップ))
何より深刻なのは、本件のように懲戒請求人に対して弁護士から訴訟が提起されると、一般人に萎縮効果が生じることである。
神原元はツイッターで「現時点で被告はごく一部であるが、最終的には懲戒請求者全員に裁判所までお越し頂きたいと思う。」と予告している。
このようなことをされては、一般人は恐ろしくて、今後弁護士に非行があると思料しても、弁護士会に懲戒請求など出来なくなるであろう。そうすると、「何人も」懲戒請求できると規定した弁護士法の趣旨は完全に没却されてしまう。弁護士懲戒制度は弁護士自治を支える根本柱であるから、懲戒制度が正常に機能しなくなるということは、弁護士自治が危うくなるということである。
このような、専ら萎縮効果を狙った不当訴訟をアメリカではスラップ訴訟と言う(Strategic Lawsuit Against Public Participation:公的表現活動に対する戦略訴訟)。スラップ訴訟では、原告は仮に敗けても構わないのである。提訴によって相手方と一般公衆に対し、言論(本件では懲戒請求)を抑止できるから、それで目的達成なのである。
したがって、このような弁護士自治を揺らがす不当なスラップ訴訟を抑止するためには、請求棄却判決では足りず、不当訴訟として不適法却下するしか無い。
(インターネットを利用した脅迫と攻撃)
神原元が、自身の損害の填補を求めて提訴をしたのではないことは、神原元自身がツイッターで堂々と書いている。
曰く、懲戒請求人全員を
「1000人を超えるネトウヨ」
「病識がない患者」
「ネット右翼」とひとくくりに呼んだ上で、
「彼等の更生には処罰が必要だろう」
「ネトウヨには社会的制裁のみ受けてもらえばよい」
「私の手元にある懲戒請求者のリスト。これは他の事件の解決にもつながる貴重なリストである。」
「公安警察等公的機関で保管して利用すれば犯罪(主にヘイトクライム)の抑止にもつながるかもしれない。そっちの方が正義にかなう。」
「警察は本件懲戒請求者リストを“ヘイト犯罪の傾向がある者のリスト”として永久保存し活用するだろう。その一方で個別訴訟はロシアン・ルーレット方式で継続すればよい。」「たかがネットに煽られて弁護士に大量の懲戒請求をしたりする日本人が、新聞に煽られたら朝鮮人虐殺をしないはずがない。何度も言うが、大量懲戒請求事件はヘイトクライムである。(大量虐殺の写真貼り付け)」
「“ネトウヨ絶対殺すマン”って(^.^) 俺にぴったり過ぎるよね。有難い称号を頂いた俺としては、やはり刑事で攻めたいね。逮捕や起訴につなげる行動を準備したい。」
「前科前歴になれば永久に記録される。」等等である。
これらの言葉に現れているとおり、原告らは「朝鮮人虐殺をしないはずがない」人々に、「処罰」「社会的制裁」を加え、懲戒請求手続きで入手した個人情報リストを公安に流し、刑事の逮捕や起訴等で攻め、「ネトウヨ絶対殺すマン」と笑いながら脅迫する等、一連の攻撃を公に発信しており、その攻撃の一環として民事訴訟を提起しているのである。決して原告らの損害の填補のためではない。
以上の諸事情から、神原元、佐々木亮、北周士、嶋﨑量が提起している裁判は前記東京高裁判決に照らしても、提訴権の濫用であり、不適法であることが明らかである。
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